九十一 ページ44
光.
「お代わりは?」
「もらうよ」
差し出された茶碗に、お櫃からよそった飯を盛る。
卵焼き、焼き魚、香の物。そして味噌汁。
お妙ばぁの朝飯は何時でも美味しい。
結婚したからには、俺も宏太に作るべきか?
……そもそも早起き出来る気がしないな。
「ところで、あの熱は本当に心配いらないのかい?」
「うんまぁ、恐らくね」
出汁のよく効いた、青菜の味噌汁を啜り頷いた。
慧の発熱は多分、一種の知恵熱ではと俺は見立てた。
実家で見せられた紙束は十数枚にもなっていたし、多分様々な事を色々考えたんだろうから。
「あれから10日余り経ってるからね、疲れが出たんだろう」
「そっか」
それから食べる方に集中すること暫し。
「なぁひかる」
ご馳走さま、と手を合わせた宏太が改まった口調になる。火鉢から下ろした鉄瓶の湯を急須に注いでいた俺は、顔を向けず「ん?」と答えた。
「俺に隠し事してない?」
「隠し事?はい、熱いよ」
「ん。慧とさ、ずっと何かしてるでしょ?」
若干猫舌(ちなみに慧もそう)な宏太は、湯呑みをすぐに持たず口を近付けてふぅふぅと冷ましてる。
可愛いんだから、もう。
ねぇ、然り気無い振りをして、実はものすごく気にしてた?
「あのね」
「うん。…ァチっ」
「まだ熱いでしょ。…ごめんよ宏太、俺の口からは言えないんだ」
「ふぅん?」
あちち、と呟きつつ湯呑みを持って、恐る恐る飲んでる。
今度から水も用意しとこうかしら。
「慧の提案であることをしてるの、それは認める。でも決して疚しいことじゃないから、あの子が自分から言うまで聞かないでやって欲しい」
無言で見据えてくる宏太の視線を受け止めていれば。
少しの沈黙のあと、首肯と共に軽く息が吐かれた。
「………わかったよ」
「宏太…」
「慧が言ってくるまで聞かない。…それでいいかい?」
「充分だよ、ありがとう宏太」
「ぉう。……さて、と」
宏太の視線は部屋の隅にある書棚へ。
「雨も降ってる事だし…久し振りに本でも読もうか」
「…いいねぇ。読まないといけない学術書が溜まってるんだよ」
話題が変わったのを機に、食べ終わった膳やお櫃を廊下に出した。その足で宏太の背中にそっと抱きつく。
「ありがとうね」
「どういたしまして」
向き直られ胸の中に収まった。
寄せられる唇にそっと目を閉じる。
「宏太…本は?」
「すぐじゃなくても逃げないだろ?」
「……」
たまにはいいか。
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夏夢(プロフ) - ましろさん» はぃい(^^;元気な爺様ですわwさーて坊っちゃんが先か、紫さんが先か。次章で何とかなればいいんですけども(^^;移行先でもまた遊んでくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 20時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - たくさん更新〜♪ ご・隠・居・さ・まったらぁ(≧∀≦) どんだけ浮かれてるんですか(もっとやってよくってよ) 坊っちゃんそろそろ限界ですかね? 使用人お三方、良い味出してる〜!続き楽しみです(^-^) (2021年6月13日 12時) (レス) id: 8371985186 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» スキップ、って素直に書けたら楽なんですけどねぇ(日本語縛りの壁w)ひか先生も通ってきた道なんで、慧ちゃんの気持ちがよくわかるのかもw次章もぜひ遊びに来てくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 8時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - きたきたきたー!更新ーー!!やはり、そうだったのか!ひか先生さすがだわー。御隠居は絶対スキップしながら言いふらしてんだろーなー。女三人の会話も…いやぁ、色々気になるわー。移行先、どんなことになってるかなぁ。楽しみすぎる! (2021年6月12日 19時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 大ちゃん益々隠密めいてきたですwwwそんでねみるさま、そこはほら、これからに繋がるのよぉおお( 〃▽〃)気合い入れて頑張るぞっ( ≧∀≦) (2021年5月24日 19時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏夢 | 作成日時:2019年8月29日 8時