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七十一 ページ24

慧.

何が、我が身に起こっているのか。

『っ!』

蔵の中に引き摺り込まれ、後ずさる。
その様を、かつてない目付きで追ってくる二人の男は、(じぶん)の知る作造と芳助ではなかった。

「俺らが何してたか判るか?判るよなぁ坊っちゃん」
「作造ぉ…どうすんだよぉ」

ずい、と近付いてきた作造の、草の匂いにまみれた手が乱暴に慧の顎を掴んだ。

「俺達ちょっとこれで小遣い稼ぎをしてましてね。でもあんたに知られたからにはもうおしまいだ。遅かれ早かれここを出てかなきゃなんねぇ」

やけに芝居がかった口調で、じりじりと間合いを詰めてくる作造に恐怖が込み上げる。
頭では何を言ってるんだと反論しているが、現実挟まれた顎はどんなに首を振ってもびくともしなかった。
せめてもの反抗に、顔の近さに目眩を覚えながらも睨み上げる。

そんな慧を負けじと睨む作造は、唇を斜めに曲げどこか病んだようにせせら笑う。

「生意気そうな目ですよねぇ…俺ぁね坊っちゃん。あんたのその目が苦痛に歪むとこを、ずーっと見たかったんだよ」
『…?』
「事故で女将さんが死んだのは同情するさ、でもな」

ぐい、と顎を掴む手に力が籠る。痛みに顔を歪ませれば、どろりとした目線が捩じ込まれてきた。

「その事実にずっと甘えたまんまで、のうのうと生きてられて…幸せだよなぁ?」

眉を寄せ、訝しさを隠さない慧の視線に、作造はニヤリと下卑た笑いを顔に乗せる。先程とは種類の違う危険を孕むそれに、背筋を冷たい汗が落ちた。

「口利けないついでに…この手も邪魔だな」

伸びた手に右腕を取られ、肩が外れそうな勢いで引っ張られた。

『ぃ、やっ!』
「この手も字を書けないようにしようか?でもその前に」
『ひっ?!』
「先にあんた汚したらさ…」

次の瞬間、覆い被さり夜着の裾を不躾に割る粗野な膝。

「あいつ悔しがるだろうなぁあ?」

感触に総毛立ち、恐怖に見開かれた慧の瞳を認めた作造の顔が、醜悪に彩られた。


.

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夏夢(プロフ) - ましろさん» はぃい(^^;元気な爺様ですわwさーて坊っちゃんが先か、紫さんが先か。次章で何とかなればいいんですけども(^^;移行先でもまた遊んでくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 20時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - たくさん更新〜♪ ご・隠・居・さ・まったらぁ(≧∀≦) どんだけ浮かれてるんですか(もっとやってよくってよ) 坊っちゃんそろそろ限界ですかね? 使用人お三方、良い味出してる〜!続き楽しみです(^-^) (2021年6月13日 12時) (レス) id: 8371985186 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» スキップ、って素直に書けたら楽なんですけどねぇ(日本語縛りの壁w)ひか先生も通ってきた道なんで、慧ちゃんの気持ちがよくわかるのかもw次章もぜひ遊びに来てくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 8時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - きたきたきたー!更新ーー!!やはり、そうだったのか!ひか先生さすがだわー。御隠居は絶対スキップしながら言いふらしてんだろーなー。女三人の会話も…いやぁ、色々気になるわー。移行先、どんなことになってるかなぁ。楽しみすぎる! (2021年6月12日 19時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 大ちゃん益々隠密めいてきたですwwwそんでねみるさま、そこはほら、これからに繋がるのよぉおお( 〃▽〃)気合い入れて頑張るぞっ( ≧∀≦) (2021年5月24日 19時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏夢 | 作成日時:2019年8月29日 8時

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