♭僕が君の先生になった日 ページ11
「Aがやるんなら賛成だな。
お前いつも敬語だし」
「いや、アレはもはや敬語じゃねェだろ。
慇懃無礼なだけで。」
「まぁ暴言は吐かなくなるんじゃねェの」
「歳も一番近ェし」
「モンスター除けば一番チビだし」
黙って聞いていれば酷い言われようだ。
『僕、やるって言ってませんけど』
僕がやる方へと進んでいく話の流れを止める。
勘弁して欲しい。
僕だってお頭やその他の奴等から回ってきた書類整理で忙しいんだ。
そう思っている僕を見て、お頭がぼやく。
「……そうか、残念だ。
あ〜ぁ、Aなら頼りがいがあるし、ウタを任せられると思ったんだがなァ……」
『……』
「もしウタが口悪くなっちまったらなァ〜……
もしかしたら足し算も真面に出来ねェ大人になっちまうかもしれねェしなァ〜……」
『…………』
「どっかに上手く教えてやれる奴がいればなァ〜……」
チラッチラッとこっちを見てくるお頭。
「何だかんだ言って、Aもお頭と同じくらいウタの世話焼いてるしなァ」
周りにいる奴等にも肘でつつかれて、「ホラ、お前やれよ」みたいな空気になっている。
……っておい誰だ、どさくさに紛れて僕の足踏んだ奴。
「お頭もああ言ってるんだし……
無理にとは言わねェが、やってくれないか、A」
駄目押しの副船長……！
僕が副船長の頼みを断れないと知っていて……！
『あ〜〜〜クソ、分かりましたよ！
その代わり、失敗しても文句言わないで下さいよ？！
再三言ってますけど、僕だってこんな小さい子の面倒見たことないんですから！！』
半ばヤケクソでそう言った。
「お、やってくれるか！
頼もしいな〜、A！！」
『たのっ……！？
いや、お頭も親なんですから、ちゃんと自主的に教育を……！
あくまで、僕は、サポートだけなんで！！
そこの所、勘違いしないで下さいね！！？』
「分かってるさ！
お前にだけ負担は掛けない。ウタはおれの娘だからな」
不安半分、楽しみ半分。
ウタの将来。
その責任の一端を担っていると考えると、僕じゃ力不足なんじゃって思って心配になるけれど……
ウタの成長を、より近くで見ていけるってのは、確かにかなり役得なのかも。
ちゃんと懐いてくれるかな。
ちゃんと教えてやれるかな。
いつの間にか眠ってたウタの頭を撫でる。
『ウタ、僕はAです。
至らないところもあるかもしれないけれど今日から君の“先生”になります。』
『改めて────これから、よろしくお願いします。』
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作者名：凍ったライム | 作成日時：2022年10月1日 0時
