何でも屋と奇術師Ⅲ (ページ32)

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96話ページ32

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ついた先は湖のほとりだった

仲間への別れの挨拶を忘れるほど想い焦がれた彼を瞳が捉える

いつものように座ってトランプをいじっていた

こちらに気づいたのかゆっくりと顔を向け、張り付けたような笑みで彼は言った

ﾋｿｶ「おかえり♦」

それでもなお、星たちに照らされる彼は美しかった

貴『ただいま！ヒソカ！空！』

珍しく声を張るAにヒソカも空を見上げる

が、驚くほどノーリアクションの彼に、不安がよぎる

貴『...きれいじゃない？』

数秒遅れて彼が口を開いた

ﾋｿｶ「シャルナークの方はどうだったんだい？♣」

何もなかった、などと言えるはずもなく、やや困ったように言う

貴『上手くいかなかった...』

ﾋｿｶ「そう♠」

少し残念そうな顔をした彼だったが、自身の足を叩いて続けた

ﾋｿｶ「こっち、おいで♦」

２度目だった

あぐらをかいた彼に抱き止められるように彼に身を預け座る

背中に感じる彼の鼓動が愛しかった

彼と一緒に星空を見上げている、その事実だけで温かかった

貴『ねぇ、』

ﾋｿｶ「ん、なんだい？♦」

貴『私がヒソカにとって果実じゃないのってさ、』

ﾋｿｶ「まだ気になってたのかい？♣」

貴『教えてくれなきゃ一生気にする。』

ﾋｿｶ「そうだねぇ...♦

果実は熟れたら食べるだろう？♠」

貴『？うん。』

ﾋｿｶ「なんてったって、腐っちゃうからね♦」

貴『？』

ﾋｿｶ「ｸｸｸ♦

まだわからないのかい？♣」

貴『...わかんない。』

ﾋｿｶ「仕方ないなぁ♦

食べるって言う行為がボクにとっては壊すっていうことを意味する、って言えばわかるかい？♠」

貴『いや、だからなんで私が果実じゃ...』

ﾋｿｶ「キミは壊さないからだよ、一生ね♦

果実は結局破壊の対象なんだよ♠

でも、Aは壊さない♣

だからキミは果実じゃない、

トクベツ、なんだよ♥」