絵本2 (ページ9)

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#桜火過去考察③ ページ9

１つ目の地雷処理を終え、一息をついていると、7歳くらいの小さい女の子が声をかけてきた。
「なにかな？」
「えっと、お母さんが、頑張っている兵隊さんに綺麗なお水を渡しなさいって。あと、食べ物をあげられなくてごめんなさいって。」
「ありがとう、お嬢ちゃん。お水は大切にいただくね。」
少女は貧しい、すり切れた格好をしていた。
日々生きるのも楽ではないのだろう。
マザーコンピューターの子機の腕輪もつけていない。納税すらまともにできていないのかもしれない。
この腕輪は、貧富の差の象徴だ。
同僚は少女から隠すように腕輪を外し、お母さんのところに送ってあげる、と少女を抱き抱えた。
軍部からの支給品を勝手に外すな、と呆れながらも俺は水と彼の荷物を抱えてついていった。
「どっちかなー？」
「あっち。」
2人がニコニコしているのに微笑ましくなってると、突然俺の腕輪が警戒音を鳴らした。
「おい！ここから離れろ！」
「え？」
その瞬間、大きな爆発音と共に同僚の姿が見えなくなった。
「おい！大丈夫か！」
燃え移った火を携帯消火器で消しながら叫ぶ。
返事はない。
肉の焦げた匂いが辺りに充満するようになる。
同僚は、少女を抱き抱えたまま、四肢は欠損し、元の顔面は燃えてわからなくなり、息絶えていた。
「あ…あ…」
言葉が出なかった。
さっきまで話していた同僚が、しんだ。
「兵隊さん！うちの娘は、うちの娘はどうなったのですか！」
少女の母親らしき女性が駆け寄ってくる。
女性も腕輪をしていない。
多分、もうダメだ。
生きているわけがない。
震える手で同僚の体を退ける。
少女は同僚に覆われていたところだけ綺麗に残り、守りきれなかった腕や足は燃え尽き、息絶えていた。
「嫌ぁぁぁぁ！！！」
戦争は一時的にも終わったんじゃなかったのか？
人はもう死なないんじゃなかったのか？
マザーコンピューターは、何をやっている？
俺は…何をやっていた？
「桜火！大丈夫か！」
「これは…小型の不発弾か。」
「戦闘機用の爆弾だな。くそっ俺たちの戦争は終わらねぇのか！」
マザーコンピューターの腕輪を外すのを止めていれば。
抱えていた水を放り投げてでも俺が身代わりになっていれば。
俺が、少女を抱き抱えていれば。
そもそも戦争がなければ。
誰も死ぬ事はなかったのに。