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幕間 鯨と龍の食事会 ページ26

颯爽と去っていく少女の後ろ姿を見送って、「公子」が愉快そうに鍾離に視線を移す。

「それで?」

「……それで、とはどういう意味だ?」

やけに上機嫌な「公子」とは反対に、鍾離はいつも通りに問いを返した。

「あの子のことだよ。考え込んでたし、何か気になることでもあったんじゃないかと思って」

「あの子」と言いながら少女が去った厨房を指さし、「公子」が笑う。
そして一瞬、探るような瞳を鍾離に向けた。

鍾離はそれを真っ向から受け止めて、何でもないように茶を口に運ぶ。

「ふむ、なるほどな。それなら残念だが……『公子』殿の考えすぎだ。」

「…考えすぎ、ね。」

デザートとして運ばれてきた杏仁豆腐には、寒天で作られた琉璃百合が乗っている。
それを掬いながら「公子」は思考を巡らせた。

……『琉璃百合の花畑』と口にした直後に一瞬だけ浮かんだ、少女の「しまった」という顔。
それを目にした鍾離がやけに長く思考に耽っていたこと。

疑おうと思えば、疑えるところなど数多くある。
しかし

「『公子』殿が何を思ってあの少女を気にしているのかはわからないが、俺にその問いの答えを出すことはできないだろう。」

「…そう。」

今はまだ、目の前のこの男の考えを読むための情報(カード)が足りない。

「まぁ鍾離先生にあの子のことを探って欲しいと思ってるわけじゃないし、最初からそっちの期待はしてないよ。俺達は食事をしに来ただけだしね。」

「あぁ、その通りだ。」

同意を示す鍾離を見ながら、それに、と「公子」は口に出さないまま続ける。

「(あの子が鍾離先生に恋愛感情を持ってるのは本当みたいだし。)」

初めて会った時の言い訳が嘘ではなかった、という事実をとりあえずの収穫ということにしよう。
そう思いながら、「公子」はまた杏仁豆腐を掬った。








数分の後、すっかり空になった器をテーブルの上に並べて、二人の男は席を立つ。


_____会計の時多少のトラブルがあったのは、また別のお話。

Ep.24 つまり少女よ、前を向けってことでよろしいか?→←Ep.23 つまり早めにお帰りくださいってことでよろしいか?



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ブックマーク@りんごおれ(プロフ) - ものすごく最高です応援しています! (2023年3月4日 17時) (レス) id: 30dece2dde (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ありがとうございます……! 大遅刻更新ですが、良ければこれからもどうぞよろしくお願いいたします……! (2022年12月23日 22時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - とても面白い作品ですね!!楽しく読ませてもらっています。更新楽しみにしてますね!!! (2022年12月2日 22時) (レス) id: 7981f63c4d (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - 有害物質さん» 読んで頂きありがとうございます! 更新頻度は遅くなってしまっていますが、これからも楽しんでいただけたら嬉しいです……! (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ゆいピさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます……! もうなんと言いますかどんどん無料で読んで頂ければ嬉しいですといいますか……! 良ければこれからもどうぞよろしくお願い致します…!! (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しろぐみ | 作成日時:2022年3月30日 16時

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