甘美な日常と、漆黒の闇を貴方に。【名探偵コナン】 (ページ19)

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＊episode 君だけは＊ページ19

「あら、お嬢ちゃんのお友達？」
「ええ、まあ････そんなところよ」
「一ノ瀬瑞希です」
「じゃあ私、子供達のところへ行こうかしら」

こちらに背を向け、微かに笑う。
二人になった瞬間に訪れる沈黙。

「この向日葵、素敵ですよね」

どんどん重くなっていくそれに耐えられず、口を開いた。ふふ、とお婆さんが笑みをこぼす。

「＿＿貴女も、誰かのことを待っているの？」
「････さあ、どうなんでしょう？今はお互い巡り逢えましたけれど、今度は私が待たせる側になるかもしれないですよ」
「余程大切なのね、その人のこと＿＿そういう目をしていたから」
「ええ････命を棄てても良いくらいに、ね」

瞬間、今まで静まりっぱなしだったインカムにザザッとノイズが走る。はあ、はあ、････という荒い息と共に焦ったような快斗の声が耳に届いた。

≪今すぐチューブ通路に向かってくれ！俺、今はそっちに行けそうもねーから！≫
「了解････お婆さん、じゃあ私はこれで」
「ええ」

刹那、爆発音と共に館内には闇が訪れる。
舌打ちをし、チューブ通路に向かってローラースケートのエンジンを唸らせた。

＊
「何してるの？お姉さん」
「え････」

予想通り、チューブ通路に居たのは絵画鑑定士の宮台なつみさん。

快斗をダシに使った、張本人。

「警報、鳴ってるよ？早く逃げなくていいの？」
「それよりその瓶、蓋を閉めて今すぐ私に渡してください」
「嫌だ、って言ったら？」
「力ずくですね」

飛び蹴りを食らわせようと飛びかかるが、僅かに足りなかったようで。

なつみさんが瓶をひっくり返すと、中に入っていた薬品が空気中で自然発火し、広がっていく。何が「ひまわりを愛している」だ、笑わせないでほしい。

「快斗、」
≪お前は避難しろ！俺はひまわりが心配だから見に行く！≫
「そんなので素直に承諾するほど私は素直じゃないから」

みるみる広がっていく火に、眼鏡に映った映像だけを頼りにして展示室に突き進む。

私なら、死んでも良いから＿＿

快斗だけは、無事でいて。