白黒パレット【怪盗キッド/黒羽快斗】

episode44. ページ44

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未だにモヤモヤする気持ちを抱えながら恵子と別れ、家に帰ってパソコンを起動する。
久々に使うスカイプ。その相手はもちろん、千影さん。

「あら、どうしたの？珍しいじゃない！」
「ちょっと訊きたいことがあったんですよ」

えへへ、と苦笑して画面を見据える。
何でも訊いて！と笑顔で言う千影さんにほっとしつつごくりと唾を飲み、口を開いた。

「あの、白雪Aちゃんって知ってますか？」
「Aちゃん？」

その名前を反芻する彼女。
知らないと言ってほしい。昼間見たあの光景は幻覚であってほしい。
そんな密かな願いもむなしく、「知ってるわよ〜！」と陽気な声が聞こえた。

「快斗とはほぼ生まれたときからの付き合いじゃなかったかなぁ……お互いにすっごく仲良かったんだけど、急に留学しちゃってつい最近帰国したのよ」
「え、じゃあ快斗とは幼馴染なんですか？」
「ええ！親同士仲が良かったのもあってね〜！」
「そうなんですか……」

ぱきん、と何かが壊れる音がする。
今まで抱えていたこのモヤモヤの正体がやっとわかったのかもしれない。
なんでこんなことに今まで気づかなかったんだろう。

「……で、Aちゃんがどうかしたの？」
「あ、いや、今日快斗と一緒に歩いてるのを錦座で見かけたんです！」
「あら、本当？」
「はい！恋人繋ぎとかしてたので、デートかなあと思って声はかけなかったんですけど……」
「恋人繋ぎね〜！」

面白くなってきた、と言わんばかりの表情を見せる千影さん。後で快斗が質問攻めになる未来が容易に想像できる。

「あ、そろそろ私はこれで……」
「ええ！何か役に立ててたら良いけど……じゃあね、青子ちゃん」
「はい！ありがとうございます」

ぱたん、とパソコンの蓋を閉じてベッドに倒れ込む。
枕をぎゅっと抱きしめてそこに顔を埋め、少し憂鬱になっている気持ちを落ちつけてみた。
もし2人が付き合っているとして、それでもこの気持ちを忘れずにいることを神様は許してくれるのかな、なんて。

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