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episode11. ページ11

「ねえ、本当に何だったの?冗談を言ったことは謝るから教えてよ」
「……絶対言わねぇ」

頬を真っ赤に染めた快斗がついっとそっぽを向く。……何だろ、変なの。片耳にはめていたイヤホンからラブソングが流れてきた。

この曲は私のお気に入り。片想いをする女子の心情を描いた切ないメロディーが、今の自分と共鳴している気がするから。

「ねえ、快斗」
「何だよ」
「好きな小説の一部分なんだけど……ふふっ、今の快斗に一番言いたかったのは“電話と海と私”かな」

はあ?と素っ頓狂な声を上げる快斗に、意味深な笑いを向ける。本当の意味が分かるまで、どのくらいかかるのかな。

「ニヤニヤしてんの怖いんだけど」
「微笑んでるの!」

マジックで玩具の魚を出して快斗に放り投げる。「ひあっ」と後退りするその様子に思わず吹き出し、腹を抱えて笑った。

「天下の大怪盗がたかが玩具で『ひあっ』て!そろそろ直しなさいよ、その魚嫌い」
「お前も悪戯癖止めろよな!毎回毎回、心臓に悪いんだよ……小さい頃はあんなに素直だったのにな」

お互いに口元は笑いながらも睨み合う。なんだか楽しくなってきて、快斗と一緒に笑い出した。寺井さんがその様子を微笑ましく見守ってくれていたとは、知らずに。

「話戻すけど、結局さっきのは何だったの」
「お前に言うと『また新手の冗談?』とか言って笑い飛ばしそうだからやめとく」

なにそれ。頬を膨らませて快斗を見ると、その繊細な人差し指が頬を突く。ぷすぅ、と空気が漏れ、快斗が笑う。

「何すんの!」
「いや、あまりにも可愛かったから崩してやろうかと思ってさ」
「……人の気も知らないで」

最後の呟きは聞こえていなかったそうで、快斗が自分の持っていたアイスを置いて私の方へと滑らせる。そのアイスを一口舐めて気付いた。

「ねえ、これって間接キス」
「んなもん良いだろ。小さい頃にお前がしょっちゅう家に預けられたとき一緒に風呂入れられたの、まだ覚えてるからな」
「何で覚えてるの!?もう十年くらい前じゃない、快斗の変態!」
「はぁ!?んなんじゃねーよ!」

やれやれ、と寺井さんが頭を抱えていたのは、また別の話。

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シルビア-Silvia-(プロフ) - つばき-tubaki -さん» ありがとうございます!!!自分でも書いてて叫びそうになりながら頑張りました(?)お褒めの言葉嬉しすぎます……!頑張りますね! (2019年6月9日 17時) (レス) id: 1b30589c5a (このIDを非表示/違反報告)
つばき-tubaki - - シルビアさんもHoneyWorks さんが好きなんですね私もです!!!アリサちゃんのセリフが出てきた時嬉しくて叫びました(笑)。Honey Works さんみたいに面白いです!更新頑張って下さい! (2019年6月9日 17時) (レス) id: 4f1f916ec6 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア-Silvia-(プロフ) - 天音さん» そうです!!!アリサちゃんのそのセリフが可愛すぎてどこかで使えないかなぁと思って入れました笑HoneyWorksさん大好きなんですよ……!!ありがとうございます、更新頑張りますね!! (2019年6月8日 23時) (レス) id: 1b30589c5a (このIDを非表示/違反報告)
天音 - 恋人になったんですね!ずっといつ告白するのかハラハラしてました。あの、もしかしてepisode41の「好きすぎて、やばい」ってHoneyWorksさんの「生意気ハニー」の高見沢アリサちゃんの台詞ですか?(違ったらごめんなさい)更新頑張って下さい(長々とすみません)。 (2019年6月8日 22時) (レス) id: d5e2e87506 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア-Silvia-(プロフ) - 美紅さん» お褒めの言葉ありがとうございます〜!これからもドキドキさせられるよう頑張りますね笑 (2019年5月1日 15時) (レス) id: 1b30589c5a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Silvia | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年3月20日 14時

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