第065夜 ページ16
飛行船に近づくに連れて心臓の鼓動が速くなっているのがわかる。
抱きしめている新一くんに、この鼓動が伝わってしまいそうなくらい、速く、大きくなっていく。
隣でキッドと操縦士さんが何かを言っていたけど、私の耳には届かず、別のことを考えていた。
キッドに話してしまった。
たった一部分でも、家の事を話してしまった。
巻き込んでしまうかも知れない。
いや……、確実に巻き込む。
一度口にしてしまった言葉は取り消す事が出来ない。だったら、どう彼に危害が加わる事なく遠ざけるか、それだけを意識しなければいけない。
この先、ずっと……。
無意識に腕に力が入っていたのか、新一くんが見上げてきて“どうした？”と問い掛けてきた。
「……いえ、犯人たちは一体何がしたいのかなって」
そもそも、私が彼と会わなければ。
一緒にいなければいい。
独りで居れば、誰も巻き込まなかったはず……。
ダメ…、全部をマイナスに考えてしまう。
また体が震え出してしまった。
恐怖で……。
「おい、どう───」
「大丈夫だ。俺が付いてんだ。何も怖くねーよ」
新一くんの言葉を遮り、キッドは私の頭に手を置いて笑いながら言った。
あぁ、その言葉だけで救われる。
安心をくれる。どうして彼はこんなにも私の欲している言葉を投げかけてくれるのだろう。
彼の優しさが心に染みるのと同時に、時々その優しさに心が痛くなる。
「風向きと、今のヘリのスピードは？」
「東南東、時速２００キロ！」
「……このまま進んで、追い抜いた辺りで飛行船にスピードを合わせて下さい」
そろそろ、ですね。
決意は固まってるから大丈夫。
「…行くぜ？」
「はい、準備はできています」
確認する様にキッドは私の耳元でそっと囁いた。
私がそう答えるとキッドはニッと歯を見せて笑うと、私の腕をひいた。
「それじゃ、ボク達はこの辺で失礼します！」
ヘリの扉を開けるとキッドを始め、私は新一くんを抱えてバッと外に出た。
キッドは私を横抱きしている。
風に乗り、飛行船に足を付けるキッドをしっかり見て、抱えていた新一くんを降ろす。
「新一くん、先に」
新一くんを降ろした直後、風がブワッと煽られ、キッドの重心は後ろへ行き、足も後ろへ後ろへと運ぶ。
「と、と、と…」
「キ、キッド…さん？」
「と、と、と、と…」
「ね…、大丈夫、ですよね？」
タラリ、と彼の頬に汗が流れたのを私は見逃さない。
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メイリュー(プロフ) - noppiさん» コメントありがとうございます！！不定期ですが更新していきますので宜しくお願いします！！ (10月5日 13時) (
レス) id: e92fbb5050 (このIDを非表示/違反報告)
noppi(プロフ) - 続きも見たいです(*^▽^*) (2022年5月5日 15時) (レス) @page10 id: a056ba0898 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：メイリュー | 作成日時：2022年4月12日 14時
