払暁 ページ7
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トリイくんと喋るようになって2週間ほどが経った。特に彼の事を疑問に思うことは無くなり、教室でも普通に会話を重ねるような仲になったと思う。
彼は私が雑用を押し付けられるとどこに居たって駆けつけて手伝ってくれて、それが今までになかった事だったから、最初は慣れずなんとなく断りを入れたりしていた。けれど彼はめげずに私を手伝いに来てくれて、結局彼に甘んじて一緒に作業をしたりしていた。
「鷹宮サン、…て、ムズムズするから下の名前で呼んでいい?」
「ん?うん」
「んふふ、Aってええ名前よな」
塾までの時間、今日も押し付けられたホチキス止めをトリイくんと二人でしていた。彼の時間を奪うのは申し訳ないと思い少し手を早めるが、彼はこの作業が楽しいのかゆったりとホチキス止めを行っていた。
話の合間、脈絡なくトリイくんが呼び方を変えたいと言うので断る理由もなく承諾した。苗字呼びがムズムズする、ってどういう感情なのかよく分からなかったけど、呼び方って確かに合う合わないあるからしょうがないか。
感慨深そうに私の名前を呼んだ彼は、まるで割れ物のように丁寧に私の名前を咀嚼してそう言った。いい名前かどうかは分からないけど、彼の言葉はあまりに純粋で、本当にそう思ってくれてるんだと思うとこの名前を付けてくれた両親に感謝したくなった。
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空が白みはじめた頃。
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作者名:ヒスイ | 作成日時:2020年12月19日 22時