【鬼滅の刃】蟲柱の妹は、妹だと名乗らない 肆

佰伍拾壱話〜カナヲside〜 ページ40

見えなかった。




全く、見えなかった。




『………こんなもんか。』





ゆらり、と木刀を下ろすA。




Aの攻撃が、ほとんど見えなかった。




特に最後の攻撃。




首すじに木刀が当たるまで背後にいるなんて気付かなかった。






……いつの間に。





『………花の呼吸、か…。』
カナヲ「…………なにか、ダメ、だった…？」




カナエ姉さんが使っていた「花の呼吸」。




ほとんどが見て盗んだものだ。






『いいんじゃない？……ただ私の呼吸とは相性が悪いだけ。』





相性が悪いなんてものじゃない。





そんな話じゃない。





実力が、違う。






違いすぎる。






師範よりも、強い。







『……実力云々じゃない。』
カナヲ「え？」
『カナヲの武器はその目の良さ。……なら、動きを見られる前にその目が追いつかないようにすればいい。』





すればいい、なんて言ったってそう簡単に出来るわけじゃない。







見ていないと悪いところに当たる。






それは分かっていた。





『……上弦相手じゃ諸刃の刃だね。』






それだけ言い残すと、Aは道場から出て行った。






きっと、あれでまだ本気じゃない。





まだ、何か隠し持ってる。






そんな気がする。





蟲柱「……カナヲ。」
カナヲ「師範…。すみません。負けてしまいました… …。」
蟲柱「いいえ。……それより、最後の動き、見えましたか？」
カナヲ「………。」





首を横に振る。





師範でも見えなかった。






炭治郎も見えなかったって言ってた。






鬼相手には凄い攻撃技だけど、敵に回したら厄介なものになりそう。









蟲柱「……このあとは時透くんの稽古があるのでしょう？」
カナヲ「……はい。……行って、来ます。」







………だめだめ。




これからの稽古に集中しないと……。






行ってきます、の声と共に道場を出た。







ーーーーー





炭治郎「…しのぶさん。Aさんのあの攻撃
…。」
蟲柱「私も初めて見ました…。」





見たこともない呼吸。






さらに「滅の呼吸」なんて聞いたことがない。





蟲柱「(……3年前までは呼吸自体が未完成だった筈。
あそこまで強くなっているなんて……。)」



蟲柱「(……一体どれだけの努力を。……なんて。
私はいつまで経っても浅はかですね……。)」

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