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横尾さんとご飯に行った2日後、私は残業でいつもより遅めの帰宅をしていた。
未だに彼のあの、間近で見た切れ長の瞳を思い出すだけでドキドキしてしまう。
大人で落ち着いているかと思いきや、突然大事なところで噛んだりする少しぬけている彼のギャップは、心臓に悪い。
そんなことを考えながら、疲れた体であの公園前を歩いていると、前から玉森くんが歩いてきた。
この道で会うのは久しぶりだ。
「意識して」発言を思い出してドキッとしたけれど、ここで逃げるのもよくないと思い、勇気を出して声をかけることにする。
「玉森くんっ!こんばんは。」
声をかけた私を、彼はキッと睨んだ。
今までそんなキツイ目をした彼を見たことがなく、ビクッとして足を止めてしまう。
玉森くんは睨みながら私の目の前まで歩いてくると、ため息をついた。
「A…なんで…。」
「な、なにが?私なにかしちゃった?」
玉森くんは手で自分の前髪をくしゃくしゃっとして、少し悲しげな顔をした。
「なにって…そんなのAが1番分かってるはずじゃん。」
そう言いながら私の首元を指さした。
「そのネックレス、もうしない方がいいよ。」
玉森くんから貰ったお気に入りのネックレス。
「え…?」
「じゃあ。」
そのまま、スッと私の脇をすり抜けて彼は去って行ってしまった。
私はわけが分からず呆然とその場に立ち尽くしてしまう。
いつも彼に会うと、ふわっと暖かくなる心が冷え込んでしまっている。
あの日から玉森くんと連絡はとっていないし、彼に何をしてしまったのかが分からない。
彼に突き放され、冷たい瞳で見据えられることが、こんなにも辛いことだとは思わなかった。
話を聞きに追いかけたいが、拒絶されるのが怖くて足を踏み出せない。
胸元のネックレスをぎゅっと握りながら、しばらくその場から動くことができなかった。
今夜の風も、冷たく、強い。
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作者名:kainaniak2 | 作成日時:2019年7月21日 1時