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玉森くんが家に来た翌日、仕事を早めに終わらせて家に帰ると、玄関に入った瞬間に横尾さんからのメッセージがきた。
［あと30分くらいで着きます。］
絵文字も何もない固めの文章とあの酔っ払っていた時とのギャップに思わず微笑む。
ササっと準備を整えて待っていると、下についたとの連絡があった。
マンションを出ると、向かいの道に一台の黒い車。
ウィーンと窓が開くと、眼鏡をかけた横尾さんが無表情でひらひらっと手を振っている。
道を渡って助手席側に回ると、ガチャっとドアが開く。運転席から横尾さんがドアを開けてくれていた。
「お疲れ様です。車だと思わなかったのでびっくりしちゃいました。」
「ああ、この間みたいな失態は見せられないからさ(笑) 乗って。」
「失礼します。」と一言断って助手席に乗り込む。
男の人が運転する車の助手席に乗るのなんか久しぶりで、妙にドキドキしてしまう。
「Aちゃん、お魚は平気？」
「あっ、はい、すきです！」
「ははっじゃあ出発するね。シートベルト、してる？」
「バッチリです。」
にこっと微笑むと、横尾さんは車を発進させた。
エンジンの音でかき消えてしまいそうなほど小さな音で、音楽が流れている。
チラッと運転席を見ると、端正な横顔。
玉森くんもキレイだけど、またちょっと違う、男の人を感じるシャープな顔立ち。
ハンドルを握る手がキレイで、思わず目が離せなくなる。
「今日、急にごめんね？」
突然話しかけられ、見ているのがバレたのかと思って一瞬ビクッとしてしまう。
「あ、いえいえ！普通にヒマしてたので、大丈夫ですよ！むしろ気を遣わせてしまって、こんな、迎えにまできてもらって本当申し訳ないってゆーか、そんなにしてもらうほどのことしてないのに、まさか誘ってもらえてありがたいってゆーか、あの、なんかすみません。」
キュッと赤信号で車が止まる。
運転席の彼がこちらを向いて、優しい顔で「大丈夫。」って一言。
そのまま青に変わった信号に従って前を向いて車を前進させる横尾さん。
2人きりの空間と落ち着いたその雰囲気にドキドキと心臓が高鳴っていた。
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作者名：kainaniak2 | 作成日時：2019年7月21日 1時
