愛し愛され。3【Fischer's】 (ページ17)

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私がいなくても　motoki　リクページ17

※死を取り扱うお話となりますので苦手な方はバックしてください。

motoki side

“Aの状態が悪化した。”

そう、医師から伝えられた。

ガンの腫瘍が移転したと言う。

しかも今度は心臓の近くにあって手術をするのも困難だと。

もう抗がん剤を打つことしかできない

つまり末期だということ。

俺は抗がん剤を副作用で苦しんでいるAの手を握りしめて見守ることしかできない。

嗚呼。俺が代わりになってあげれたらいいのに。

Aは副作用が落ち着いたら俺に毎回

「ありがとう。モトキ。」

そういって微笑むんだ。

その度、俺は泣きそうになる。

医師から末期ということを伝えられたあと、Aの病室に入りたくなかった。

「ふぅー…。」

勇気を出して笑顔をなんとか作ってAの病室に入る。

「…あ。モトキ、おかえり。」

そういってAは微笑む。

「…先生、なんて言ってた？」

「っ…。」

なんて伝えたらいいのか、わからなかった。

そんな俺を見て悟ったのかAは

「正直に言っていいからね。」

と言った。

「…心臓に腫瘍が移転してて、手術…できないって。…あと、もって1ヶ月…だって。」

俺が途切れ途切れになりながら伝えるとAは悲しそうに笑って、そっか。と言った。

「…じゃあ、私あと１ヶ月後悔の無いように生きる。」

だからモトキも協力して…？

そう言うAにはい以外の言葉は思い付かなかった。

それから１ヶ月、俺達は充実した１ヶ月を過ごせたと思う。

そしてあっという間に１ヶ月が経った。

Aはもうベッドから起き上がることさえできなくなっていた。

「…ねぇ、モトキ？」

「…私がいなくなったら素敵な彼女作ってね。」

「何言って…！」

「…それで、結婚して、可愛い子供も作って、私に見せに来てね。」

「…私が元気だったらやりたかったことだから。その夢、モトキが果たして。…お願い。」

「っ…！」

「あと、こんな弱い彼女で、ごめん、ね…」

「モト、キに辛い思いさせて、ごめんなさい…」

そう言っているAはもう涙でうまく喋れていなかった。

俺も泣いていてうまく喋れないんだけど。

「…俺、はどんどん弱っていくAを見ているのが辛くて、何度、も代われたらいいのに、って思ってた。だけど一番辛いのはAだ、もんね。」

「…俺、頑張る、ね。いい人見つけて結婚して、子供作って。絶対最初に、Aに見せに、いく。」