#８ ページ10
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夜風が身を冷ます。
今日は風が静かだな、と手を伸ばして思っていれば、屋上へ続く階段を駆け上がる足音が聞こえた。
やば、部下が来た？
煙草を吸いながら扉を見てみれば、上がってきたのは
「A」
「あれ、大先生やん」
急いで上がってきたのだろうか、肩で息をする大先生がそこにはいた。
どないしたん？と声を掛ければ、大先生は怖い顔をして私に近付き、肩を強く揺さぶった。
あの、一応、病人。
なんて言えないから「痛い痛い」と笑顔で答えた。
「…なあ、なんかあったやろ？」
「え？なーんもないよ？」
「…」
あぁ、やだな。大先生ってば感鋭い。気付かれたくない。
だって、これは全部…
「……ねえ、大先生」
「ん？」
「輪廻転生、って知っとる？」
「輪廻転生？」
「そ、輪廻転生。
東の地方の国の思想で、霊魂って死んであの世に還ったらこの世に何度も生まれ変わってくるんやって」
煙を吐いて、手すりに身を乗せて問いかける。
大先生は、少し考えた後私の隣に移動し懐から煙草を一本取り出して火をつけた。
風に揺られて大先生の髪が揺れる。
よれよれの背広を見て、アイロンかけないとなあ、と思う私はメイド化してきてるのかもしれない。
お互い何も喋らないまま、数分が経った。
重い沈黙を破ったのは彼の方で、煙草を手に持ち替えると遠くの街を見下ろして話しかけてきた。
「それで？輪廻転生がどないしたん？」
「………私、生まれ変わったら何になるかな？」
「は？」
「普通の女の子？男の子？王族？貧乏？それとも…」
また軍人、かな？
この時の私の顔は一体どんな感じだったんだろうか。
大先生の瞳が小刻みに揺れるのを、私は酷く脳裏に焼き付いて忘れることはないだろう。
ごめんね、そんな顔をさせるつもりじゃなかったの。
貴方になら言ってもいいかなって思ったけど…
＿言うんじゃあ、なかったな
「なぁんて、嘘嘘！びっくりした？」
「…」
「さ、夜遅いよ、もう寝よ？」
「……添い寝する？」
「ふは、冗談きっつ〜」
大先生の横を過ぎて城内に戻ろうとすれば、「A」と呼ばれ、足を止める。
あんなに賑やかだった城下町は、静まり返っていて、空を見上げれば星が綺麗に輝いている。
静かな夜に、大先生の声が私の耳に入る。
「なぁに？」
「…A、どこにも行かんよな？」
あぁ、君は、本当に…＿＿
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そあ - とても素敵な作品を読ませていただいてありがとうございます。今まで見た事ない結末で、終始己の感情を揺さぶられながら見ていました。言語化ができないくらい本当に感動して涙が止まらなかったです。改めて、こんなに素敵な作品を創り上げていただきありがとうございま (2023年4月16日 9時) (
レス) @page50 id: 631f5adca0 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 読み終わった頃には涙でびしょびしょでした…。号泣…。ありがとう…。 (2023年2月4日 7時) (レス) @page50 id: fdfca7d6d9 (このIDを非表示/違反報告)
うなん(プロフ) - この作品が作られた時から知っているのに今読んでもあまり泣かない私でもとても泣いてしまいます… (2022年8月23日 23時) (レス) @page50 id: 1526234c9f (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 他人を不幸にして自分は幸せになる綺麗話か (2022年8月10日 18時) (レス) @page48 id: 12da5077e2 (このIDを非表示/違反報告)
四季 - 泣きました(((とても楽しく拝見させていただきました！泣きました(((とにかく号泣で(((素晴らしい作品をありがとうございました！！ (2022年7月12日 16時) (レス) id: b733f218de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らある
| 作者ホームページ：http://kain00765467/yuki.pearl.//
作成日時：2020年3月23日 15時
