46時間目 ページ46
「あの子はとにかく“速い”のよ。だから、潜入よりも真っ正面から狙う方が合っているのよね」
「でも、さっき私が打った弾を全て打ち消していた･･･」
イリーナの言葉の後に速水がそう言った。
「それも、さっき言った“暗殺の為に会得したもの”に入るわね。複数の技術を習得するより、自分に合ったものを伸ばして主流にしている暗殺者が多いわ。でもあの子は、ありとあらゆる暗殺スキルを会得している」
「自分の特性に合わないものまで会得しているからな。スナイパーとしての腕もある。すばしっこい小娘からは全く想像がつかんがな」
ロヴロにここまで言わせている彼女の実力は一体どれほどのものなのか。
E組の皆が知らないAについて、ポンポン出てくる。
「そういえば、この前Aの男装がかっこいいってビッチ先生言ってたでしょ？別人みたいにみえるの？」
「顔が整っているから、男性にも女性にも化けられる。本当に恐ろしいわ」
矢田の質問にイリーナが答える。
「Aさんって“声”を自在に操っているんですよね？何処まで操ることが出来るんですか？」
「そうだな･･･。イリーナと私の声は既に会得されているのは確かだ」
「もしかすると、俺たちの声真似も･･･」
「とっくに会得しているだろうな」
ロヴロの話を聞いて、生徒達が息を呑む。
「でもあの子が声を使うときは、大体潜入の時と、通話の時くらいね」
「通話？」
「依頼よ、依頼。あの子は依頼で雇われた時だけ、人を殺すのよ。そこが唯一の救いね」
「どうして？」
イリーナの言葉に茅野が返す。
「そうか、お前達は彼奴の暗殺する姿を見たことがないのか」
「まあ、転入してきたときも、期末テスト前だったから見ることなかったですね」
ロヴロの言葉に潮田が返す。
「ヤバいんですか？Aの暗殺している姿」
「ヤバい、なんて言葉で表すものじゃないわ･･･。あれは“狂人”よ」
前原の言葉にイリーナが顔を青ざめながら返す。
「狂、人･･･？」
「ああ。全身に血を浴びて笑っているのさ。その姿は“狂人”がお似合いさ」
＿＿＿二人の脳裏に浮かんでいるのは、人だったものの前で全身血を浴びて笑っているAだ。
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作者名：恵野 | 作成日時：2019年6月7日 21時
