40時間目 ページ40
「ならば僕の事を浅野君、と呼ぶのは止めてもらおう」
「何故？」
あー、早く帰りたい･･･。
さっきから訊いていればこいつ、支配欲の塊じゃないか･･･。
「いずれ僕が貴様を支配する」
「へぇ？やってみなよ。僕は縛られるのが嫌いなんだ」
僕は浅野君に挑発する。
「AAだったな」
「うん、そうだよ。浅野学秀」
目が合う。
数秒間、見つめ合った僕たち。
先に口を開いたのは浅野君だ。
「覚えておけ、貴様を支配するのは僕だ。『A』」
「いいねぇ。面白いじゃないか。その日が来るといいね？『学秀』」
君の宣言、脳の端っこに覚えておくよ。
・
「ここだ」
「ありがとう」
「では僕はこれで」
そう言って学秀は来た道を戻っていった。
あの性格がなければ女性に好かれそうな人間なのに。
･･･さて、一度きちんと挨拶しておかないとね。
ドアを三回ノックする。
ドアの向こうから声が聞こえたので、ドアを開ける。
「･･･待っていたよ。＿＿＿AAさん」
「お初にお目にかかります、浅野理事長」
初対面だね、浅野学峯殿？
僕は理事長殿の机から三歩離れた位置で歩みを止める。
「時間がなかったもので、挨拶が遅れたことをお詫び致します」
「構わないさ。大変だね、“暗殺者”とは」
「ええ。楽ではありませんよ」
「単刀直入に言う。＿＿＿＿A組に来ないかい？」
まあ言われるだろうね。
学年一位がE組にいるのはそちら側としては侮辱に近いだろう。
“E組は常に下でなければならない”
前に莉桜がそんなことを言っていた。
今回のA組とE組の賭けの事もあったし、相当ダメージは大きいだろうね。
「残念ながら、私は依頼されたのでここに居るだけです。ターゲットを暗殺する為だけにここにいる『部外者』ですから、その話は呑めませんね」
そうですか、と言って理事長殿は椅子から立ち上がって僕の近くまで歩いてくる。
と、素早い動作で僕につかみかかろうとする腕。
･･･荷物、外に置いてきて正解だった。
「おや、捕まえようとしたのですが･･･」
「随分とお速い動作で。荷物を持った状態だったら捕まっていましたよ」
この人、本当に一般人？
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作者名：恵野 | 作成日時：2019年6月7日 21時
