39時間目 ページ39
「杉野も名前で呼んでほしいのか？」
「い、いやっ、俺はいいよ･･･」
顔をほんのり赤くしながら杉野はそう言った。
「あれ、浅野じゃん。なんでこんな所に？」
「･･･そこにいるE組の転入生との約束があるから、ここで待っていただけだ」
莉桜が浅野を視界に捉え、話しかける。
そうだったそうだった。放課後は彼と会う予定が入っていた。
「そうでしたね。では行きましょうか」
僕はすぐに演技モードに切り替えて、浅野の元に行く。
後ろから叫び声が聞こえる。
あまりにもうるさいので後ろを向いて＿＿＿
「(演技だ)」
と、口パクで答えた。
さて、彼らには伝わったかな？
・
「3-A･･･ここが成績優秀の人たちが集まっている教室なんですね」
「まあ。それより、いつまでそこに立っているつもりだ。教室には誰も居ない。入ってこい」
僕に命令するなんて･･･。でも、ここではお淑やかな女子生徒でいなければ。
浅野君に言われ、教室に入る。
椅子をひいて、ここに座るように促される。
ふうん、女性の扱いには慣れているのか？
浅野君は僕が座った席の前に椅子を持ってきて座る。
「では、まずは＿＿＿
そのお淑やかな仮面を剥いで貰おうか」
へえ、僕の演技を見抜くとはね。
僕の演技を見抜くなんて凄いじゃないか。
「･･･下手だったかな？僕の演技は」
「いいや。僕には分かったが、他の人は気づかないだろう」
見破られていたのなら仕方ない。正直に認めよう。
一般人に見抜かれるなんて、僕もまだまだだね。
「それで、僕に何の用？僕の演技を見抜いた君の質問には答えられる範囲で答えてあげよう」
僕は浅野君を見て、そう言う。
「五教科全て100点。僕ですら取ったことのない結果をお前は取ったんだ。この学校は成績が全て。･･･E組の賭けに勝っていれば、あの人を･･･！」
学業に専念するのはいいことだけどさぁ･･･。
「君をそこまで動かす原動力は何なんだい？」
「･･･僕はあの人を支配したい」
「あの人、とは」
まあ何となく予想はつくけど、あえて訊く。
「･･･貴様が後で会いに行く人物だ」
「貴様呼びは止めてもらえるかな、浅野君」
やはり理事長殿の事だったか。
･･･と言うより、この僕を貴様呼びとは、いい度胸じゃないか。
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作者名：恵野 | 作成日時：2019年6月7日 21時
