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図書館の扉をノックし、ギィと軋む音を響かせる扉をゆっくりと開いた。そこからは紅茶の良い香りがした。

きっと、エーミール様が飲んでいるのだろう。その本人は、音に反応しこちらを一目見た後本に視線を戻した。

もう、彼は優しく微笑んでどうしましたか?なんて聞いてくれない。本を探していたら、それはこちらですと案内もしてくれない。
割と前からそうだったのに、ふと思い出してしまう。

そんな思いはどうでもいいと振り切り、資料を探していく。運良くすぐに見つけることができ、手にとってエーミール様に許可を頂きに行く。


『エーミール様。この本をお借りしたいのですが』

「…」


聞こえなかったのだろうか?あぁ、集中しずぎて聞いていないという場合もあり得る。エーミール様の本への集中力は並大抵のものではない。


『あの、エーミール様?』

「…」

『エーミール様!』

「っ、触んなや!」


また聞こえなかったのかと今度は肩に触れてみた。触れたと言っても、つつく程度で。
エーミール様が声をあげるなんてめずらしい。顔も真っ赤にして、それほど怒っているというわけか。


「無視、しとったんや。邪魔すんなや」

『…申し訳御座いませんでした。用はこの場で終わらせ、仕事に戻りますね』


あの優しいエーミール様からの言葉とは信じたくなくて、落ち込んだ気分のまま席に座る。こんな気分でここに居たくないので必要事項だけ抜き出す作業をできるだけ早く終わらせる。
作業おわり、と本を閉じる。エーミール様は私が近づかないように本の山でバリケードを作っていた。

そんな、わかりやすくしなくってももう認めたよ。ごめんなさい、もうできるだけ近づきません。

できるだけ音を立てずに本を元にあった位置にしまい、部屋を退出した。帰る時にエーミール様と目があったような気がしたが気のせいだろう。
色素が薄い瞳のせいで、何処をみているのかが分かりにくくて、勘違いしただけだ。

そう思い込んで、また自室にこもる。早く書類を終わらせよう。

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なつき*俺ナー☆(プロフ) - 子供たちとです^^ (2020年4月24日 13時) (レス) id: 52f2fc1340 (このIDを非表示/違反報告)
あか(プロフ) - なつき*俺ナー☆さん» 返信遅れてしまい申し訳ありません。鬼ごっこ、というのは我々国の子供達とでしょうか?それともタイマンでしょうか? (2020年4月23日 23時) (レス) id: c2b0dfe023 (このIDを非表示/違反報告)
なつき*俺ナー☆(プロフ) - 個人的にぴくとさんの鬼ごっこが見たいです (2020年4月18日 10時) (レス) id: 52f2fc1340 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あか | 作成日時:2019年12月23日 0時

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