嫌いになりたい【wrwrd!】 (ページ6)

今日:10 hit、昨日:2 hit、合計:151,668 hit

5 ページ6

.

「A様！お久しぶりです！」

『はい、お久しぶりです。元気そうで何よりです』

城下町へ降り、見回りを開始する。今話しかけてくださったのは、総統閣下がよく通っているケーキ屋の店主さん。
毎回ながら話しかけてくださり、とても良い人だと感じる。

世間話をしていると、遠くから私を呼ぶ声が聞こえる。

「あ！A様だー！！あそぼ！」

見た目も性格も、元気なわんぱく少年のアル君。この子も私を見かけたら飛んできてくれる子。

『えぇ、いいですよ』

「こら、アル。遊んで下さいでしょう」

『直さなくて大丈夫ですよ。アル君、遊びましょうか』

「わーい！！A様こっちで鬼ごっこしよう！！」

『もちろんです。それでは失礼します』

ぺこりと店主さんに頭を下げ、アル君の元へと向かう。広場に行くと、アル君とそのお友達数名がわくわくとした様子でこちらを待っていた。

「A様が鬼だよ！１０数えたら僕らを捕まえてー！」

『はい』

一、二と十まで数える。その間に子供達合計５名は散り散りになって走っていった様子だった。

私も戦闘が出来ないわけではない。軍人なのだから、相応の心得はあるつもりだ。

つまり、子供達を捕まえるなんていうことは容易にできてしまうわけで。本気でやるべきか迷ってしまう。少し手加減をしてから捕まえよう。

『十。それでは、行きますよ』

「わー！こっち来た！」

ぱたぱたと逃げる男の子。幼いながらに足が早い。相手が疲れる前に捕まえてしまう。

「A様はやーい！！」

『ありがとうございます。貴方も中々早かったですよ』

感想を伝えると少年は嬉しそうに微笑む。その顔を見た後すぐに他の子供の姿を探す。そして、手加減をしつつ捕まえる。それを繰り返していき、最後の一人。

『最後はアル君でしたか』

「はぁ…はぁ…A様はやいー！！」

そう言いながらもまだ逃げ続けているアル君。とても疲れている様子で、段々とペースも落ちてきている。
もう捕まえよう、と思った途端にアル君が転びかける。

『っ！！…危なかったですね』

腕を伸ばし、アル君の腕を掴みこちらに引き寄せる。私の胸にダイブしたアル君はどこにも怪我はないようで、ホッと安心した。
私に抱きしめられる格好になってしまったアル君は、顔を勢いよく上げキラキラとした目で私を見る。

「ありがとう！」

元気に笑う顔をみて、今日も平和だなと実感した。