gからの内通者【wrwrd!】 (ページ19)

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デビュタントページ19

消臭は念入りにした。
服には煙草の臭いはしないだろう。
書類を持って、総統室に向かう。
あの重厚な扉の前に立ち、3回叩く。

gr｢入れ。｣

低い声が私を招く。
ゆっくりと開ければ、彼は書類に目を通している最中だった。
…傍らにあるお菓子には目を瞑った方が良いのだろうか。

『こちら、書類です。直しの部分は私がしましたので、あとはサインをお願いします。』

gr｢ほう。グラシアがやってくれたのか。｣

『今回だけは。次サボったら椅子に縛り付けてやらせるからな、と書記長から伝言です。』

彼も苦い顔をし、書類を受け取ってくれた。
ついでに大先生から貰ったものも出す。

『これ、大先生からです。』

小箱を開いて中身を見る。
そこには変わらず美しいチョコレートが宝石のごとく輝いている。

gr｢…俺にか？｣

『はい。』

一緒に食べろ、と言われたが恐れ多い。
というかこの総統怖い。

gr｢本当は？｣

『…一緒に食べてね、と。』

gr｢なぜ嘘を言った。｣

『恐れ多いので。』

彼は小箱と私を交互に見て、それを引き出しに仕舞った。

gr｢グラシアは甘いものに抗体がない。チョコレートなんぞ最初に食べさせたら依存症になってしまう。｣

グルッペンは立ち上がり、私に手を差し伸べた。
意味がわからず、棒立ちしてしまう。

gr｢…総統命令だ、手を取れ。お前の茶会デビューだ。｣

命令、と言われたので手を取る。
彼は慣れたような手付きでエスコートをする。
総統室の端にあった小さな扉を開けると長い廊下が奥まで続いている。
そこをズカズカと進み、また扉を開いた。

gr｢俺の私室で申し訳ないが。ここに座ってくれ、美しいデビュタント。｣

高そうな椅子に座らせられた。
ここの家具全部高そうだ。
さすが総統といったところか。
グルッペンは何やら用意している。
覗いてみれば、そこにはティーカップ。
…私、仕事中だよね？

『グルッペンさん、私一応仕事中で』

gr｢俺に付き合ってくれ。｣

まるで俺と一緒に怒られてくれ、と言っているようだ。
初日からこれでは書記長になんと言われるか。
それを察したのか、グルッペンはインカムでどこかへ連絡をし始めた。

gr｢グラシア借りるぞ。しばらく来るな。…これで君は怒られない。大丈夫だ。｣

いや何が大丈夫だ。
もういい、諦めよう。
私はこの場を楽しむことにした。

gr｢良い子だ。紅茶は飲みやすいティンブラを用意した。｣

総統直々に入れた紅茶だ。
薔薇の香りがする。
感じたままに言えば、鋭いな、と返された。