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No.19 ページ21

「宜しくお願いします」



「おう。………おい、青鯖。手前はさっさと立ち去りやがれ」



「厭だよ。何処かの蛞蝓が時祢に無体を働くかもしれないじゃないか」



「働くか!」





私は中也の怒声を聞き流し、時祢の頭を撫でた。





「時祢、無理しちゃ駄目だからね」



「うん」






時祢は動きやすいように、白のシャツに黒のショートパンツを身に付けている。



何時も下ろしている長い髪も、後頭部で一つに結わえてあった。





「治お兄ちゃん、仕事は?」



「うっ………」



「頑張って」



「…………分かったよ。蛞蝓に何かされたら直ぐに云うんだよ」





真っ直ぐな瞳を向けられれば、無下には出来ない。



私はよく念押ししてから、鍛練場を後にした。



そして鍛練が終る時間である三時間後、再び訪れた。



其処では、中也が時祢の髪を結い直しているところだった。



恐らく鍛練の中で乱れたのだろう。





「痛くねェか?」



「うん」



「異能力も体術も筋は悪くない。此れからは体力作りと異能のコントロールからやっていくぞ」



「分かった」





二人の様子は、まるで本当の兄妹のようで。



妙に苛立った私は、中也の髪を後ろから引っ張った。





「っ!?てめ、何しやがるクソ太宰!」



「え?私も中也の髪括ってあげようかと思って」



「ふざけんな!さっさと離せ!」





私は中也の髪を離し、時祢を抱き上げた。





「時祢、蛞蝓に何かされてない?」



「大丈夫」



「そうかい。じゃあ行こうか」





私は早足でその場を立ち去った。



時祢を軽く抱き締めると、苛立ちが溶けて消えていく気がした。



だが此の後のことを考え、少し足が重くなった。





「次の練習は、地下で行うよ」



「うん」





時祢の瞳が少し暗くなった。



厭がっていることは分かっている。



だが、首領の命令は絶対だ。



こんなことをさせなくてはいけない不甲斐ない兄を、如何か赦してほしい。

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麗葉 - 大好きすぎて気づいたら四回も?読んでました(笑)体調に気をつけて頑張ってください! (5月2日 21時) (レス) id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 猫好きさん» 本当にそうよねえ奥さん←←もう先生は私を苦しめようとして来てるとしか思えないですよ…小学校卒業して「よっしゃマラソン大会無い!」からの長距離走があった絶望感…(´・ω・`) (2019年1月1日 23時) (レス) id: 424c23822c (このIDを非表示/違反報告)
猫好き - ホントですよ…マラソン大会とかは真面目に荒そうかと思いましたよ…ホント、やぁねぇ奥さん← (2019年1月1日 20時) (レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 猫好きさん» 大丈夫ですよ!立ち眩みは現在学生の私でも日常茶飯事ですから…………orz 体育の長距離とか本当にもう……………………殺しに来てますよ…(´・ω・`) (2019年1月1日 14時) (レス) id: 3546326a0b (このIDを非表示/違反報告)
猫好き - 1km全力疾走?アハハ…知らないの?僕ヒキニートだから歩くだけで立ち眩みするのw( °∇^)] (2019年1月1日 13時) (レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年8月14日 11時

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