第3話 ページ4
時空ホールと言われるものの中に入ると、真っ暗な空間に放り出された。しばらくして体が光に包まれると、周りの壁が変なウネウネしている空間に切り変わった。虹色に輝くこの空間は視覚がおかしくなりそうだ。
体は宙に浮き、無重力みたい。ただ漂うばかりで、何もできない。
先ほどの男の子の声も聞こえなくなり、おーい、と声を出してみても応答はない。
まさか、私、死んだの…?これが死後の世界?
どうしよう…と頭を抱えていると、機械のようなエンジン音と共に、とても速い物体が私の目の前まで飛んできて、思わず驚愕の声を上げた。
『えぁっ!?』
「おっと、驚かせて悪かったね。君がAちゃんかな?」
上から降りかかってきた男性の声。顔を上げると、顔全体を覆っている緑色のヘルメットを被った大人がいた。バイクのような宙に浮いている機械を操作していて、この無重力空間に浮遊している私の隣に上手く並びあっている。
『なんで私の名前を知って…』
「君のお父さんとは親戚でね。悪いけど時間がないから、今すぐ君を隠しておくために、とある時代へ転送するよ」
『お父さん…?隠す…?何を言ってるんですか…?』
「説明はいつか話すよ。しばらく先になるかも知れないけどね。ほら、おいで」
男性に腕を引かれて、ふわふわと浮いている機械の上に同乗させられる。頭の中がクエスチョンマークで埋まりながらも、バイクの後ろ側に乗せられた私はその人の背中を大人しく掴んだ。
「飛ばすから振り落とされないように。それじゃ行くよ!」
『わっ!』
バイクはどんどん加速していき、私のポニーテールが爆風でバサバサと揺れた。
混乱しつつも、目を瞑って必死で目の前の人のお腹に手を回してしがみつくこと数分。
白い光が瞼の裏に見えて、バイクのエンジン音が止まる。「ついたよ」と優しい声で声をかけられて、頭を撫でられた。
ゆっくり目を開けてみると、そこは…要塞のような、ちょっと雰囲気が硬い建物があった。
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作者名:アスター | 作成日時:2022年8月8日 17時