68 ｢構いません｣ ページ18
＿＿＿こんのすけ、
｢あの子、なおすから、…！それまで、帰れなくなっても、それでも良いから…！おねがいします…っ！｣
一期一振が、ある日近侍を務めた、その一週間前、その太刀は、瀕死の弟との斬り合いを言霊で命じられ、望まぬ破壊に及んだ。
彼は、初めて…自らの手で弟を折った。
一期一振は、主が部屋から離れた時、隅にいた私に気付き、出来る限りの処置をしてくれた。私の名を呼んだその者は、自らの、血だらけになった手袋を見、言った。
＿＿＿こんのすけ、…私は次、またこの手で…弟や誰かを折ることになったら、
｢おねがいします、…！｣
＿＿＿＿＿自ら、折れようと誓いました。
彼は微笑んでいた。
＿＿＿死にたいのです。
｢治させてください…！！｣
じわ、と私の目に溢れた涙が一粒頬に伝い、三日月殿の手が、僅かに震えたのが見えた。かっ、と胸の中に熱い感情が込み上げ、その方に駆け寄った。
｢やりましょう｣
涙と懇願で必死になった顔が私へ向けられる。その方が私の名を小さく呼んだ。
｢、こんのすけさん、｣
脈打つ体を、三日月殿に向ける。
｢三日月殿、もう既にこの本丸の刀剣達は、自身の主君の異変に気付いている筈です。ここを出れば、殺しにかかってくるやもしれませぬ。護衛を頼みます｣
ざわっと政府の騒ぎが再び膨れ始めた。私の言葉を三日月殿は終始、静かに聞き、普段の微笑みが消えた表情で、その方へ射抜く様な瞳を上げた。
｢そなたは、元の時代へ、戻れなくなるかもしれん｣
｢…｣
｢誰かを手入れすることは、そなたをより、…ここから離れることを難しくするだろう｣
｢…｣
｢それでも、五虎退を助けるか？｣
｢はい｣
その方の即答に、思わず目を見張った。戻れなくなってもいいか、それでもいいか。良いと答えた。
三日月殿から、すいません、と体を離し、鼻を啜って涙を強く拭ったその方は、今やどよめきに変わっている電話向こうの声には耳を貸さず、三日月殿だけを、凛と見つめていた。
｢元の世界に戻れる可能性は、非常に低いと、そう言われました｣
｢…｣
｢このまま何も出来ずに、…政府のところで、知らせを待つだけなら、｣
｢…｣
｢あたしが助かるために、誰かが死んで、…あたしがここから離れて、皆消えるくらいなら｣
ぎゅ、とその方が、自身の手を固く握りしめた。
｢帰れなくなっても、構いません。ここで出来ることをします。どうか、彼らを、治させて下さい。｣
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鳥(プロフ) - 読者様 一つ一つにお返し出来ずすみません！コメントありがとうございます！(三)についてですが、推敲が終わったところから随時公開しております！またお時間空いたり思い出して頂けた時に読んでもらえたら嬉しいです。遅筆ですが楽しんで書いております (7月7日 10時) (
レス) id: 4bf57b87a0 (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - 初めまして！一気に見させていただきました。とても面白いです！そして続きが気になります。パスワードおしえていただけないでしょうか？ (6月18日 13時) (レス) @page50 id: 673a00a1b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ＠前垢消えた(プロフ) - 続き楽しみにしてます！！！！！ (4月28日 13時) (レス) @page50 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
テオ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ここまで読ませていただき本当に面白いと感じました。表現の仕方がとても好きでストーリーも最高です。推敲が終わるのをとても楽しみにしています。無理のない程度で頑張ってください💪 (4月27日 14時) (レス) id: 85b09c3093 (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 始めまして！クロです凄く面白くて続きが気になるのでパスワード教えてくださいm(._.)m (2023年3月30日 1時) (レス) @page50 id: 16daf975b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年2月24日 20時
