63 (……五虎、退……？) ページ13
もう、お願いだから、あたしにこれ以上急展開を振りかけないでよと咄嗟に思った。ここまできたら、耐えてきたあたしでもほんとうに限界がすぎる、
喉の奥から掠れた声をもらしてがばっと振り返った。見れば、あたしと同様に後ろを振り返ってる三日月様がいて、彼の肩の向こうに、その声の主はいた。
(誰)
その答えは、………考えれば、分かった。
(あたしが、…置いた、はずの)
｢…ぇ、｣
分かってたけど、そこに見えた“それ”に、口を閉じるのも、息を吸うのも忘れて全身が凍り付いた。
あたしに、…最初に沸いた感情は、“拒絶”だった。
…、
自分の見てるものが信じられなかった。
(見てられない)
見てたくない、見られない、だってあまりに、
(惨、すぎ、る)
｢あるじ、さま｣
もう一度。か細くて、たかい声であたしを｢あるじさま｣と呼んだのは、
(……五虎、退……？)
正絹の上に置いていた筈のあの、ボロボロの短刀、五虎退、さん、が、人の形を取って、そこにいた。え、何で。瞬時にその疑問が脳裏を過ぎったけど、そんなこと真剣に考えてられなかった。だって、五虎退、さん
｢…そんな、｣
傍らで、こんのすけさんの声がした。パソコンの声はもう今や大勢の雑多な声が混じってて、視界の情報に牛耳られたあたしの意識はもうそっちに専念することなんて無理だった。その、五虎退さんの、姿に、
いた、っていう言い方は相応しくない、彼はそこに、うつ伏せになって動けずにいた。いや、転がってる、って言葉の方が相応しいと思えた。こんなに、
(こんなに、むごいものを、)
あたしは今まで生きてきて、見たことが無い。
動けずにいる理由は誰が見たって明白だった。
五虎退さんの両腕、両足、どっちも無い。
(うそでしょ、？)
あの体はどう見たって子供だ。心臓があたしを食べようとしてるんじゃないかってぐらいバクバクと鳴っている。無意識に口元にやった手がガタガタと震えていた。嘘、待って、あんな、子供を、……？
彼の傍らに上を向いて転がった黒い帽子と、白…いや、もう赤なのか分かんないラインが入った揃いの服、五虎退さんの周囲に何匹か、あれは、虎…？小さい虎が意識を失って倒れてるのが見えた。お腹の辺りが赤い、みんな、みんな怪我してる、
真っ白な正絹がみるみる赤くなっている。
うそ、やだ、あんなの、死ぬ、すぐ死んじゃう、
「あるじ、さま…」
五虎退さんが、ゆっくりと俯いていた顔をあげた。
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鳥(プロフ) - 読者様 一つ一つにお返し出来ずすみません！コメントありがとうございます！(三)についてですが、推敲が終わったところから随時公開しております！またお時間空いたり思い出して頂けた時に読んでもらえたら嬉しいです。遅筆ですが楽しんで書いております (7月7日 10時) (
レス) id: 4bf57b87a0 (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - 初めまして！一気に見させていただきました。とても面白いです！そして続きが気になります。パスワードおしえていただけないでしょうか？ (6月18日 13時) (レス) @page50 id: 673a00a1b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ＠前垢消えた(プロフ) - 続き楽しみにしてます！！！！！ (4月28日 13時) (レス) @page50 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
テオ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ここまで読ませていただき本当に面白いと感じました。表現の仕方がとても好きでストーリーも最高です。推敲が終わるのをとても楽しみにしています。無理のない程度で頑張ってください💪 (4月27日 14時) (レス) id: 85b09c3093 (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 始めまして！クロです凄く面白くて続きが気になるのでパスワード教えてくださいm(._.)m (2023年3月30日 1時) (レス) @page50 id: 16daf975b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年2月24日 20時
