21 (あの日々は一体、) ページ21
何とか、
｢感謝、致します、｣
何とか、気持ちを落ち着かせ、顔を上げると、そこには思い切りぎゅっと口を一文字に結び、私を見るその方がいた。つかの間、すぐに全身が竦む思いが込み上げるが、
(別人…別人なのだ)
そう、己に言い聞かせる。
そして、どうやらこの方は、言葉通り本当に何も喋らないつもりらしい、と分かった瞬間、頬に流れて込んでくる感情を感じた。これは、………私は、可笑しい、と感じているのか。あまりに、長い間置き去りにされた懐かしい感情だった。恐怖以外の感情を覚えたのは、いつ以来だろうか…。
私たちのあの日々は、
＿＿＿嫌です…っ、嫌です主…っ！！！
＿＿＿＿主様！おやめ下さいあるじさッごは、っ…！
＿＿＿＿こんの、すけ、…！
＿＿＿＿殺せっつってんだよ。
(あの日々は一体、)
政府からは、この本丸の辿る運命は…消滅に決定したことが告げられた。にも関わらず、私は眼前で起こっている、“あの審神者が消えた”という事実の方に今…心を割かれている。
それもそうだ。死んだほうが良いのではと、何度考えたことか。
私も、そして……この本丸にいる刀剣男士たちも。
長らく、ずっと死に目に遭ってきた。私の中に、消滅を拒む、…“生きたい”という思いなど、この目に見えるものなら、それはほぼ枯葉同然に朽ち果てていることだろう。
この方はこの数日以内に、政府の元へ行く。恐らく、この審神者部屋にゲートは現れるだろう。
そしてその後、この本丸ごと私も消されるのだろう。これほど本丸を荒廃させてしまった責任は、審神者のサポート役として、到底負い切れない程のものだ。
私まで救出されるなど、そんなことは起こらない。
(そうだ、)
私のこの傷は、治したところで、無駄なのだ。私だけが、治されて良いわけがない。
(何より、)
…ここで折られていった、彼らを思うと。
動揺と拭い切れぬ恐怖に蓋をし、その方を見上げた。
｢お気持ちだけで、充分で御座います、｣
｢…、｣
｢拒む理由は、…貴方様に、説明出来ぬ…理解されぬであろうものが、多くあるのです、｣
｢…｣
｢何卒、お気に病まず、御自身の保身のみをお考え下さい…｣
今にも倒れそうな体の軸を何とか律し、見抜かれぬよう、そう告げた。
ぎゅっと、更に口を噛む強さを強めたその方の顔には、あらゆる感情が溢れていた。困惑、心配、遠慮と…正義感。別人なのだ。本当に…。私は、再び頭を下げ、申し訳ありません、と言った。
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ゆり - 面白かったです！！続編も気になります。見てみたいのでパスワード教えて下さい。お願いします(＞人＜;) (2022年5月4日 17時) (
レス) id: a0139c2d82 (このIDを非表示/違反報告)
plus__m(プロフ) - 登場人物達の感情や情景がとても細やかに書かれていて、読んでいるだけなのにその場を身をもって体験しているような気持ちになってとても面白いです！特に緊迫したシーンは息が止まっていることも忘れて読んでました笑。続編の加筆修正終わるのを楽しみにしております！ (2022年4月19日 20時) (レス) @page50 id: 5adad14c72 (このIDを非表示/違反報告)
キャンドル(プロフ) - めちゃくちゃ面白いですね、この作品！続き、楽しみに待っております！ (2022年3月30日 20時) (レス) @page50 id: ff7e3e1da7 (このIDを非表示/違反報告)
白夜ナイ - 続編のパスワードってなんですか？気になるんですがパスワードが分からなくて読むことができません！教えてくださいm(*_ _)mm(_ _)m (2022年3月25日 22時) (レス) id: d118b4d7f4 (このIDを非表示/違反報告)
Momo_Tarou(プロフ) - 鳥さん» 続編おめでとうございます！！！絶対絶対絶対×∞に夜見に行きますので！！！ (2020年2月26日 7時) (レス) id: 55132ee02b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年1月29日 3時
