11 「政府の者を、呼びましょう」 ページ11
ぎゅっと俯いて、唇をまるめ、かんだ。痛い程。
本当に途方に暮れていた。でも、途方に暮れているのが、あたしだけじゃないことがますますあたしを困惑させてたし、状況を悪いものにしていた。
狐の質問にまともな答えも出来ない。それぐらいもういっぱいいっぱいだった。
寝巻きのスウェットの裾が、シワになるのも構わずぐしゃぐしゃに握りしめて、頑張って、自分に残ってる冷静さを死に物狂いでかき集めて、落ち着こうと務めた。
正直、ほんとにごめんと思う。
治したい、とか応急処置、とか、そんな言葉が出せたら良かったのかもしれない。
でも今のあたしは、こんな大怪我をしてる人を目の前にしても、頭が真っ白だ。
狐もあたしと同様ぐっと俯き、じっと思案していた。
思案、いや、あたしと同じくもう何も考えられないのかもしれない、
「、」
あたしも、この狐も、何をどうしたら良いのか分からないんだ、
そんな絶望感が、狐からも、そして青年の体からもあふれ出していた。
この狐からしたら、それまで…主か主人か分かんないけど、その人が、…突然「何にも分からん」「誰」とか言い出してるってことだ。そんなの彼らだって、固まって当然だ…、
………………あれ、ちょっと待って
(彼らがこんな重症なのに、なんであたしだけ無傷なの?)
その疑問が浮かんで、何故かぞっと全身に寒気がしたとき、狐が唐突に切り出した。
「政府の者を、呼びましょう」
「…へ?」
(政府?)
「それが…、一番、最良に思われます」
狐に言われた言葉を理解するのに時間がかかった。
政府って…あの、政府?
政府の者を、呼ぶ…?って、
別世界から来たあたしは、つまり、
もしかして、
(れ、連行?)
「あ、あの、政府、って、」
狐はそれ以上何も語ってはくれず、踵を返し、部屋のある一方向に体を引き摺っていった。
慌てて、お兄さんを一度一瞥して、そのあとについていく。部屋の反対側。そこにあった短脚の大テーブルには、明日にでも捨てられそうな、酷く埃をかぶったパソコンが置かれていた。
「電源をつけると、政府への、連絡先が…、すぐ見つかります」
「…」
「この状況、この先の事を、説明する対応者と、連絡が取れるはずです」
狐があたしへ頭を下げて言った。
「お願い致します」
ここに来てから何度浴びたか分からない理由不明の懇願をまた受け止めながら、ゆっくりと、あたしは机の前に座った。
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ゆり - 面白かったです!!続編も気になります。見てみたいのでパスワード教えて下さい。お願いします(>人<;) (2022年5月4日 17時) (レス) id: a0139c2d82 (このIDを非表示/違反報告)
plus__m(プロフ) - 登場人物達の感情や情景がとても細やかに書かれていて、読んでいるだけなのにその場を身をもって体験しているような気持ちになってとても面白いです!特に緊迫したシーンは息が止まっていることも忘れて読んでました笑。続編の加筆修正終わるのを楽しみにしております! (2022年4月19日 20時) (レス) @page50 id: 5adad14c72 (このIDを非表示/違反報告)
キャンドル(プロフ) - めちゃくちゃ面白いですね、この作品!続き、楽しみに待っております! (2022年3月30日 20時) (レス) @page50 id: ff7e3e1da7 (このIDを非表示/違反報告)
白夜ナイ - 続編のパスワードってなんですか?気になるんですがパスワードが分からなくて読むことができません!教えてくださいm(*_ _)mm(_ _)m (2022年3月25日 22時) (レス) id: d118b4d7f4 (このIDを非表示/違反報告)
Momo_Tarou(プロフ) - 鳥さん» 続編おめでとうございます!!!絶対絶対絶対×∞に夜見に行きますので!!! (2020年2月26日 7時) (レス) id: 55132ee02b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳥 | 作成日時:2020年1月29日 3時