最後の雨

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「あとね、」



静かな車内にAの声だけが響く。
女性にしては少し低い彼女の声は聞いていて心地がいい。



「ゆうたくんにごめんって言われる度、
　寂しくなっちゃって。」


「撮影とか編集とか大変なの分かってる。
　それでもゆうたくんは私のために時間作ってくれようとしてくれて、
　だけどそれも上手くいかないことが増えてきて。

　会えなくてごめんって、一人にしてごめんって何回も謝ってくれるの。」


「彼女いないって言うって動画上げたじゃん？」



数日前、自分たちや自分たちの彼女、地元の友達を守るために
コムドットには彼女がいないと一律して言っていくという動画を上げた。


盗撮だったりストーカーだったり、
嫌がらせのDMから彼女を守りたくて、
地元の友達にまで枷を背負わせたくなくて
メンバーで話し合って決めたこと。

Aにもしっかり話して、理解してもらったこと。



「ゆうたくんたちが決めたことなのに

　ゆうたくんが一番納得いってないっていうか、
　自分の中でうまく処理できてない気がして。」


「そういうの見ててさ、

　…うーん、なんだろう、


　どんな恋も、この恋より辛くないなあって。」



Aの言ってることはなんとなくだけど分かる。


ゆうたは彼女がいないと言う度、
Aの存在を隠さなければならないとき、

酷く傷付いた顔をする。


ゆうたのことが好きすぎる視聴者の方は、
そんな顔をする理由を勘付いてしまうと思うくらいだ。



「ごめんってもう言って欲しくないし、
　悲しそうなゆうたくんも見たくないの。」


ひゅ「だから離れたのか、」



そうだね、と眉を下げて笑う彼女。

ゆうたと離れるという決断は
Aなりの覚悟だったんだと思う。

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