交錯する線 part 2 【Kento】 (ページ39)

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中島健人side

「……して遊んで……けんてぃー……の？
可愛いねぇ」

今回彼女がうちに来てわかったことがある。

彼女が実は俺のことをけんてぃーと愛称で呼んでいること。
ボニータに話しかけているのが聞こえたのだ。
普段は中島さんだなんて澄まして呼んでいるのに。

もうひとつ、菊池のことは下の名前で呼んでいること。

そして。

それに対し嫉妬の感情が渦巻くほど、俺は彼女を好きになってしまっていることーー。

ガチャリと扉が閉まった。

彼女のいなくなったリビングに戻る。
ぼふっとソファに倒れ込み自分の腕で目元を覆う。

本当に無自覚なのか。

あの顔を他の男にも見せているかもしれないと思うと、彼女は別に悪くないのに、彼女の隙のあるところにさえイラつきそうになる。
その隙に自分も漬け込んでいるくせに。

攻めすぎた、申し訳なかった。

だなんてことはこれっぽっちも思っていない。
むしろ我慢したぐらいだ。

菊池が何も考えず女子と仲良くするとは考えられないから言っているのに、彼女はまるでわかっていなかった。
彼女の危機感が無い様子にも、もどかしさが募る。

彼女の頬に触れ顔を上げさせると、こちらを見上げる瞳の奥が揺れているのがわかる。
普段はしっかりしているのに、こういうことをされると一気に雰囲気が変わる。

この顔をさせているのが自分だと思うとたまらない。

自分の中にこんな嗜虐的な気持ちがあるとは思わなかった。
優しく愛でたい気持ちは確かなのに、嫉妬の黒い感情のせいでめちゃくちゃに乱してしまいたいような、身勝手な思いが頭をもたげる。

俺のそんな思いを敏感に感じ取ったのか、彼女の体が強ばるのが伝わってきた。

やりすぎたとは思わないが、怖がらせてしまっては元も子もない。

正直、読めない。

本当に嫌がられているわけではないことは分かるが、だからといってどこまでも押せる感じもしないのだ。

彼女からの明確なGOサインが見えない。

これ以上攻めたらやばいよね？と揺さぶってみたけれど、多分やばいのは俺だけだ。

彼女は隙がないわけではない。
押しに弱そうな感じもする。
なのに簡単に雰囲気に流されてくれることはなさそうなのだ。