交錯する線 part 2 【Kento】 (ページ37)

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帰り際、ドアを開ける前に振り返り、
「お邪魔しました、楽しかったです」と言う。

色々あったけど楽しかったのは事実だ。

中島さんに手を握られた。

私は何回彼から手を握られらただろう。

「また来てくれる？」

私の手の甲を親指でするすると触りながら、言う。

珍しく彼の視線は握った手に落ちていた。
あんな強気で攻めたことを少し反省しているのか弱気になっているのか、ちょっと意外だ。

「はい」コクリと頷くと

「よかった」と彼は言った。

ちゅ。

私の手の甲に彼の唇が触れた。
本当に一瞬の出来事だった。

「な！中島さん！！」

やっと彼は顔を上げる。

上目遣いでこちらを見て、悪戯が成功したような顔をして言う。

「敬愛のキスじゃん。王子が姫にやるやつでしょ。
俺王子様キャラなんでごめんね」

今日は幾度となくごめんを聞いたけど、その全てにおいて悪いと思ってないではないかと責め寄りたくなるのを堪え、自分の手を胸元に引き寄せる。

しかも全然弱気になんてなってないじゃん！

「お見送りはここまでだけど、気をつけて帰るんだよ？」

と片手を軽く上げて優しく言ってきた。

「はい。今日はありがとうございました。
おじゃましました」
と、どうにか言う。

「うん、またね」

玄関の外へ出て振り返りぺこりと頭を下げる。

彼は微笑んでいる。

ガチャリと扉が閉まった。