交錯する線 part 2 【Kento】 (ページ21)

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結局遅くなってしまった。
夕方というには外は暗すぎる。

店に到着し開口一番遅くなってごめん、と言うと、
全然大丈夫ですよ、と優しく言ってくれる。

顔を見るのも久しぶりなのに、彼女を前にすると、
2週間前に感じた自分の中の甘い感情が急に呼び覚まされる。

勘弁してくれ。

前回と同じ部屋に通された。

彼女は毎度の如くテキパキと仕事を進めていく。

ここはもう少し詰めたほうがよさそうですね、
ここはあと1cm広げて…

と言い、ちょこちょこスーツを触りながら作業をしている彼女を鏡越しにながめる。

あれから中島と話したのか気になるところだが、
詳細を聞くのもなんだか複雑だなと思うと自分から聞くのもはばかられた。

2週間もあったんだ。
中島が何も動かないはずがない。

……まくん！風磨君！おーい」

目の前にひょこっと彼女が手を振りながら現れた。

「あぁ、ごめん、ちょっと考え事してて」

にしても、おーいって。かわいいかよ。

「すみません。
何度も呼んだんですけど、全然聞こえてなかったみたいだったので」

と少しバツが悪そうに言う。

「ウエストをもう少し詰めますか、って聞きたかったんですけど、どうですか？」

いや、このままで大丈夫そう、と答える。

作業を再開し
「休めてますか？お忙しいんですよね？」
と彼女が聞いてくる。

「大丈夫、大丈夫。色々と思うところがあって」
と俺は軽く言った。

「え、悩み事ですか？私でよければ話聞きますので、いつでも言ってください」
とか当の本人に言われてしまう。

「ほんとに？相談乗ってくれんの？」

「もちろんですよ。私も相談乗ってもらいましたし」

「頼もしいなぁ。じゃあ自分じゃどうしようもなくなったら聞いてもらおうかな」なんて言ってみる。

「はい、ぜひ！
手伝えることあったら言って下さいね」

笑顔で言われて、
どうせ手伝えねーよと捻くれた思いが浮かんできて自分が嫌になる。