交錯する線 part 2 【Kento】 (ページ17)

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顔が近い。

何で彼はこんなに距離感馬鹿なのか。

初めの頃の私よりずいぶん耐性がついたはずなのに、いざ彼が眼前に迫ると気圧されてしまう。

かっこよすぎるのだ。

ちょっと視線を落とし、はいと頷くと

「もうバイバイなのに何で目、逸らすの？
こっち見て」

と言いながら握っていた片方の手を離し、
俯き加減の私の頬に優しく触れてきた。

びっくりして顔を上げると

「やっとこっち見た」と笑われる。

どきどきしながら彼の目を見て

「あんまりそういうことやらない方がいいですよ」
と精一杯言う。

「えー？それは一般論として？
中村サン個人的な話？」

「どっちもです」

「どうして？」などとわかっているくせに聞いてくる。

「そりゃあ勘違いしてしまう人もいるでしょうし…
私としてもそういうことされるのは恥ずかしいので」と小さく言うと

「なるほどね、気をつける」

気をつける気なんてさらさら無い言い方だ。

「中村サン？
俺に色々されて恥ずかしがってる時の顔、
他の男に見せちゃダメだからね？」

と10秒前の会話はまるっきりなかったかのように、
私の肩を片手で軽く抱き寄せ耳元でそう囁いた。

全然気をつけてないし、やはり、気をつける気なんてないのだ。

「気をつけて帰ってね。また連絡するね」

ぱっと離れて爽やかに言う。

私は、はいとぎこちないながらも笑顔で言い、
そのまま個室を出た。