それはまるで魔法のように【７】 (ページ14)

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＊２人の時間 ( 新聞 ) ＊ページ14

難波 side

夕飯が終わってひと段落すると、Aさんは決まって談話室の座イスに座って３０分、寮で取っている新聞を読む。その横でAさんに入れてもらった、お揃いの甘ーいココアを飲みながらテレビを見る。

55「新聞、面白いですか？」

『面白いと言うか…情報源？』

55「テレビやダメなんですか？」

チラッとテレビを見てから、また新聞に目を移して、うーん。テレビでも良いかもしれんけど、活字を読んだ方が脳にはええかな？って。と１枚新聞をめくりながら言う。

『新聞なんておじさん臭い。なんて思ってるんやない？』

55「いや、大人やな。と思います」

俺、テレビ欄しか見ないので。と言うと、テレビ欄のついでに、社説って中の短めの記事読んでみ？と言われて読んでみるけど……

55「難しいです」

『私、もうアラサーやし。社会のこと知らんかったら恥ずかしいやん？』

55「そうですか？」

『そうやで？やって、考えてみ？この歳で自分の名前漢字で書けへんかったら恥ずかしいやん？』

55「あー、うん。そうですね」

『まあ、もう少し大きくなったら社説も読んでみてや』

そういやさ、侑平。最後にいつ耳掻きした？と言われるから、そう言えばいつかな？と思って考え込むと、考え込むくらい前なんやろ？はい、おいで！と正座している、太ももパンパンと叩く。

55「え？」

『耳掻き！してあげるから、おいで』

早く！とAさんは楽しそうやけど、この年になって膝枕で耳掻きしてもらうなんて、恥ずかしい。…けどやってもらいたい。えい！と勇気を出してAさんの膝に頭を乗せる。

『動かないでね？』

55「はーい」

やっぱ若いからお肌スベスベだー。あ、大きい耳垢発見。とか１人で会話を始めるAさん。耳掻きが擽ったくて、Aさんの割烹着を握りしめる。

『擽ったい？』

55「めっちゃ擽ったいです」

もうすぐ終わるからなー。と言って、耳掻きのフワフワの部分で仕上げをしてくれて、はい。反対。と言われたから、クルッと反対になるけど。忘れてた。反対を向いたらAさんのお腹が目の前に。

55「逆は自分でやります」

『ここまでやったんやから、逆もやるよ』

はい！と半ば強引に言われるのも、きっとAさんやから嫌じゃないんやろうな。やっぱり、擽ったいです。と言うと、我慢してやー。と言われる。

Aさんが甘やかしてくれる、この時間が好き。

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