* 2 人 の 時 間 ( 料 理 ) * ページ11
姫野 side
トントントン。朝、食堂の厨房から聞こえてくるまな板と包丁のぶつかる音。寒い寒い廊下を通って食堂の扉を開けると、Aさんが昆布と鰹節から取った出汁のいい匂いがして、思わず深呼吸。
61「おはようございます」
『姫ちゃん、おはよ』
エプロンではなく、割烹着を着たAさんが厨房からひょっこり顔を出して俺だけに対して、おはようと言ってくれる。ガタガタと配膳台までイスを持って行って、Aさんを眺める。
61「朝ごはん何ですか?」
『今日はねー』
ご飯とー、白味噌のお味噌とー、大きめ茶碗蒸しとー、焼き鮭とー、その他諸々。とちゃんと答えてくれる。
『もうすぐお正月やろ?何だかんだ関西出身の選手多いやん?ちょっとだけ早いけどお雑煮感をね?』
年明けたら寮母さん帰ってきて、私は作ってあげられんから。と現実を叩きつけられる。ああ、Aさんが寮母さんをやってくれたら、どれだけ幸せか。
61「俺、Aさんのご飯、ずっと食べたいです」
『ありがと、ほんなら1軍上がってきたら、作ったるから頑張りや』
61「……頑張ります」
この人は人の扱い方が本当に上手。今だって上手く俺を頑張らせる様に仕向けてのご褒美的なね。人参を目の前に吊るされた馬みたいな。
『はい、いつもの』
61「ありがとうございます」
毎朝、早起きして食堂に通い詰めている理由。Aさんの料理している姿が好き。それと取りたての出汁に少しの醤油と酒を入れた即席のお吸い物を、俺のマグカップに入れてくれる。
前はコーンクリームスープやったけど、俺はこっちの方が好き。熱いから気を付けや?の言葉と同時に啜ったから、めっちゃ熱くて危うく舌を火傷するところやった。
『熱いって言ったやんか』
61「Aさん言うの遅いんですもん」
ごめん、ごめん。と言って大量の卵と冷ました出汁をかき混ぜる。いつもは見ない光景に、何を作ってんすか?と聞くと、茶碗蒸しの卵液。と小さい身体で必死に混ぜているから、少し冷たい返し。
61「Aさん、料理上手っすよね」
『前の職場でこんな感じでご飯作ってたからね』
大量に作るのは得意やわ。と言って大きめの器に卵液とかまぼことボイルした鶏肉を入れてレンジに入れる。
61「茶碗蒸しってレンジで出来るんですか?」
『低ワットでチンしたらできんで』
Aさんを眺めながら会話の出来る、この時間が好き。
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作者名:歌子(かこ) | 作者ホームページ:https://bit.ly/35Iex9O
作成日時:2018年9月24日 20時