I LOVE...【恋つづ/天堂浬】

33 退職希望 ページ33

「どうしたの、こんな所で話なんて」


小石川先生を空いている会議室に連れて行き、テーブルを挟んでお互い椅子に座った。



「単刀直入に言います。…ここを、辞めさせていただきたいです」



私の退職希望に困惑した様子の小石川先生。
それもそうだ、ただでさえ人手不足だというのにそこにきて医者が退職希望するもんだから、副院長としては動揺が隠せないだろう。



「突然の事で驚かれるのも分かっています。でも、これ以上、ここにいる事が辛くって…どうしていいかわからなくって…」

「…それは、天堂君絡みなのかな…？」



その質問にこくりと静かに頷いた。



「なんで辛いかはよく分からないけれど、でも、天堂君があそこまで立ち直ったのは君のお陰なんじゃないのかな？」

「私はただ側にいただけで何も…」

「それだけでも、彼にとっては十分救われたと思うよ？最愛の人を亡くして、あんな荒れ果てた天堂君がここまで戻って来れたんだから」



そこまで言うと席を立った小石川先生は、窓から見える景色を眺めてから、私の方へと振り返った。



「辞めたいという気持ちは受け取っとくけど、もう少し考えてみて欲しいんだ。君は天堂君にとって必要な存在だからさ」

「小石川先生…」

「ま、そんなに気を重くしないで、ゆっくり考えなさい」



ポンポンと肩を叩かれると、小石川先生は私を残して会議室から出て行った。



「あれ、盗み聞き？…まぁ、ちゃんとハッキリさせなよ。天堂君」


なんて会話が扉の向こうでされている事も知らず…。

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