終わらない夏ー完結ー (ページ6)

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そして、その場を去ろうと後ろに身体を向けたヒカルさんの腕を、私は掴んで引き止めた。

「あの！これ私の携帯番号です！何かあったらご連絡してください！」

咄嗟に鞄から取り出したメモ帳に携帯番号を書いて、破ってヒカルさんに渡した。

「もし、クリーニングに出しても落ちなければ弁償するので！」

それじゃあ、とメモを見て立ち尽くすヒカルさんに断りを入れてから、私はチケットを手に持ち場内へと入場した。

ーーー

彼女から勢いよく渡された携帯番号のメモを見て、俺は頭をぽりぽりと掻いた。

そんな責任感負わんでもええのにな…。

例えシミが落ちなくても彼女に電話するのはやめよう。
そう決めて、まえすが待つ駐車場に向かおうとした時、足元に何かが落ちていたのに気づいて拾い上げた。
どうやら彼女の社員証らしき物だった。

「…っ！おい、これ落ちたぞって、…もう居ないし」

顔を上げると、既に彼女の姿は無かった。

仕方がない。館内にいる係りの人にでも届けるかと思って、もう一度社員証を見て目を丸くさせた。

「…AA、っ！？」

あの女の子と同姓同名。

いや、同姓同名なんてこの世の中沢山いるに違いない。
ただの思い過ごしだと思いたい。
それなのに、先ほどメモを渡された時の彼女の瞳は、あの子とどこか重なって見えたのも事実。

『圭太くん！』

あの夏の日、俺の名前を呼ぶAの姿が頭を過ぎった。

「まさか、な…」

と言いつつも、彼女の社員証を持つ手が微かに震えていた。