終わらない夏ー完結ー (ページ4)

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04 夢か幻かページ4

会社帰り、(会社の先輩)先輩の誘いを断ってまでの用事は、今現在映画館で上映しているものにあった。

「…かっこいい」

思わず気持ちが言葉に出てしまった。
館内に張られているポスターには、あの有名俳優である藤原竜也さんが写し出されていた。
そう、私は藤原竜也さんが主演のダイナーという映画を一人で観に来たのだ。
ネットでチケットを買ってしまっていたから、(会社の先輩)先輩には申し訳ないけど、こっちを優先させてもらった。
普段映画自体観に来ようとはしないが、だがこの映画は一人でもいいからどうしても観たいと思ってしまった。

「ヒカルさんも観たのかな…」

そう、あの有名YouTuberのヒカルさんがゴリ押ししていたからだ。
大好きな人が推しているものは観たい。
それが、ヒカルさんのファンとしての務めだと勝手に思っている。
チケットの席番を確認しつつ、館内で買ったジュースを片手に角を曲がると、その先から人影が出てきた。

「きゃっ」

「おわぁっ」

気づいた時には横から出てきた人とぶつかってしまい、更には相手側の洋服に自分が持っていたジュースが少しかかってしまった。
ほんの少しだとしても、それが一般人でも分かるハイブランドの服だった。

「わぁーッ！！すみません！！本当にすみません！！」

これにはひたすら謝り、すぐさま鞄からハンカチを取り出して相手の服を軽く叩いてシミ取りをしてみるが、少し薄くなっただけで完全には取れない。
それを見て更に血の気がさーっと引いた。

「あ、あの！クリーニング代は出しますので！」

「いや、前見てなかった俺も悪いしええって」

「でも、シミ…」

そこで改めて相手の顔をしっかりと見た。
黒のキャップにその隙間から少し見える金と黒の髪色に、顎下までズラしている黒のマスク姿。

「…ヒ、カル…さん？」

これは夢か？好き過ぎるあまりの幻か？
目の前の情報量の多さについていけず、とりあえず自分の頬をつねってみたら鈍い痛みはあった。