検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:32,455 hit

16 約束 ページ16

「それが、覚えてないんです…。顔も名前も。思い出せそうで思い出せなくって…」


下の名前でもいいから覚えてたら、俺だと名乗り出れたけれど、名前も顔も覚えてないとなると、名乗り出たところで信じてくれるかどうか…。
ぐっと気持ちを押し殺すと、彼女は続けて話した。


「また花火大会に行けば思い出せそうな気もするんですけどね」

「Aはそいつの事思い出したとしてどうしたいん?会いたいん?」

「んー、会えるなら会いたいですね。今でも好きな人なので」

「え…」


今、なんて言った…?


「あ、今長い片思いだと思いました?一応他の人ともお付き合いはしてみたんですよ?でも、やっぱり彼を忘れられなくって、それが原因でいつも振られちゃうんです」


彼女は少し悲しそうな表情で、カランカランと氷が入っているお酒のグラスをくるくると回した。


「一度会えばすっきりすると思うんですけどね。まぁ、年的にも結婚しててもおかしくはないし、してたら諦めもつくし、会えないなら彼を超えるいい人を見つけるしかないかなーって」


無理して笑っている。
そんなの、当人じゃ無くてもわかるくらいに。
俺だという証拠が無くてもいい、彼女が辛い思いをしているならもう全てを明かしたい。


「あのさ、その男の子なんやけど…っ!」


ーピリリリッ


「あ、ごめんなさい!」


タイミング悪くテーブルの上に置いていた彼女の携帯が鳴り出した。
慌てて携帯の画面を見ると、直ぐにまた元の場所に戻した。


「友達からの連絡でした。…で、何でしたっけ?」

「いや…」


どうしよう。
折角のチャンスだったのに、言うタイミング逃した。
改めて彼女に言う勇気も正直無く、そんな時俺は最善の案を閃いた。


「あのさ、その姫路花火大会俺と行かへん?」

「…え?ヒカルさんと?」

「俺もそろそろ実家に一度帰ろうかなーって思ってたとこやし、ついでに花火も久々に見ようかなって…。Aの都合が良ければやけど」

「ヒカルさんがいいなら、行きたいです!」


先程までの表情と違い、余程嬉しいのか満面の笑みを浮かべている彼女。


決めた…。
その花火大会で彼女に全てを伝えよう。


俺があの時の男の子だって事も、俺もずっとAのことが忘れられず好きだって事も。
信じてくれるか難しいかも知れないけど、それでも俺達の思い出の場所で改めて伝えたい。
あの、姫路の花火大会で…。

17 夢の人→←15 確信



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (23 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
60人がお気に入り
設定タグ:ヒカル , カルピン , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

揶揄 - 最近見始めました!すごく面白いです! (2019年9月22日 9時) (レス) id: f13e29755c (このIDを非表示/違反報告)
虎苦迷花さん推しのぴかちゅう - まぢすこ…(( (2019年9月21日 20時) (レス) id: d00440de79 (このIDを非表示/違反報告)
金亀子?(プロフ) - めちゃめちゃ面白いです、!!! (2019年9月7日 23時) (レス) id: a3d0a4cc33 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:如月香葉 | 作成日時:2019年7月30日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。