第52話 少年の思うこと ページ5
．
Aから届いた手紙を読んで、僕は頭を抱えた。
中古品だの古本と一緒だの…本の価値がどれほどの物かを散々説いてやったのに、こいつは本当に分かっているのだろうかと一抹の不安がよぎる。
しかし、正直なところ、この本たちを無償で貰えるというのはかなり有難い。今の僕が絶対に買えないものだし、これらがあれば魔法薬学の知識量が大幅に増えるだろう。それよりも、
「なんて奴だ……。」
気になるのはマルフォイ先輩の件だ。
誘われたことはまあ置いておいて………
抜け出すってお前……
冗談なのか？それとも本気か？
Aは真顔で冗談を言う奴だ。普段顔を合わせていても見分けがつかないのに、顔が直接見えない休暇中の間は更に分からない。
……あの人に逆らっては厄介だ。力を持っているし、何より底が知れない。貴族特有の余裕というか、根拠もないのに飄々としているところが僕は苦手だ。
ならばどうして僕が彼を避けないのかというと、彼の人柄に関係している。あらゆる貴重な文献をホイホイと貸してくれるのだから、意外にも彼はお人好しな所がある。
Aは僕があの人の事を尊敬しているから側にいるのだと思っているらしい。とんだ勘違いだ。確かに家柄を見ずに、僕の能力を純粋に評価してくれるところは好感を持っているが、いかんせん彼は自分自身が一番好きだった。
そして純血である事を何よりの誇りとする、生粋の純血主義だ。
この件に関して彼は度を超えており、僕はそんな所が苦手なのだ。
「パーティー、か。……そういえば、Aはダンスを踊れるのか？…あれで一応貴族だから踊れるんだろうが……。何故だか、あいつの踊る姿が全く想像できない。」
考えてみれば、Aといる時に先輩や同じ寮の生徒といる時のような、嫌な雰囲気を感じたことがない。
仕草から滲み出る気品は貴族そのものなのだが、言動や人柄、オーラというか…そういったものが彼らとは似ても似つかない。彼女のみが持ち得るものだと言ってもいい。
スリザリンの中で、Aだけだろうな。
僕が自ら一緒に居たいと思ったのは。
「…………って、そうじゃないだろ。何考えてるんだ…」
………とにかく、元の持ち主がそう言っているのだから、本を送るのは辞めにしよう。
しかし、彼女の手紙の最後については、早急に手紙の返事を書かなけばならなくなった。
僕は小さく息を吐いて、新しくレターセットを用意した。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 484人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜京目(プロフ) - 有難うございます！ストレートな褒め言葉に顔のニヤケが収まりません…これからもよろしくお願いします。 (2018年12月4日 20時) (
レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんにちは、初コメ失礼致します。物語の設定とか描写の仕方がドストライク過ぎてとても好きです(^^) これからも更新楽しみにしてます。体調など崩されぬようご自愛くださいませ。 (2018年12月2日 14時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 雨さん» コメント有難うございます。最近の話の流れが難しく、四苦八苦しながら更新している状態です。ですが必ずまとめてみせます。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2018年9月22日 16時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - 頑張ってください！更新楽しみにしてます！ (2018年9月17日 21時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - fairy taleさん» 暖かいお言葉をありがとうございます。自分の好きなように書いている物を読んで頂いていること、誠に感謝しております。これからもどうぞご愛読の方よろしくお願い致します。 (2018年8月29日 20時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：亜京目 | 作成日時：2018年8月17日 22時
