第77話 遅かれ早かれ ページ31
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「え…？」
ルーピンは困惑を隠せずに乾いた声を漏らした。私は彼から目を逸らさず、さらに続けた。
「確かに君たち悪戯仕掛け人には毎度お世話になってるけどね、対抗できるくらいには在るんだよ。知ってるでしょ？」
「…そりゃあね。」
「それなら、もう放っておいてよ」
「………え？」
ルーピンの表情が驚愕に変わる。掌を握り込んだ事
によって白く柔らかな布団に細かな皺が生まれた。
私はルーピンから視線を外し、体の向きを洗面器が置かれた小さなテーブルへ向けた。
洗面器の中でたゆたう手拭いを指先で捕まえて水面からそっと引き上げる。手拭いは水を含んでいる為、重力に従うまま手にべちゃりと吸い付いた。
「君が傷付けられているのを見過ごせって言うの？」
ルーピンはやや低めの声でそう言った。
まさか、冗談だよね。暗にそんな言葉が聞こえるような気がした。
さも確認を取るかのような口調なのに、それを表す声色とのミスマッチ感が不安を煽る。しかしそれは、私ではなく彼の不安であるが。
手拭いをゆっくりと絞れば、手拭いから溢れた水が手の甲をつたって雫が一粒、また一粒と流れ出てくる。
その様子を静かに眺めながら、ルーピンの方を一切見ずに言い捨てた。
「そうだ。君は今まで通り彼らと行動を共にし、今まで通り後ろからただ眺めていればいい」
「ふざけた事を言うなよ！！！」
ルーピンが、今にも私に掴みかからんばかりの勢いで怒鳴った。その大声は保健室内で響きわたる。
私は目を丸くして彼を見た。
眉は寄せられ目は見開かれ、一言で言えば憤怒に満ちた表情だった。少しの間、いきなり怒鳴られた事に驚いて放心していたが、ベッドから這い出ようとするルーピンにハッと気付いて止めた。
たとえカーテンを閉めていようと、流石に今のはマダムに聞こえただろう。もうじき私たちを叱りにやってくるはずだ。
かといっても今のルーピンを宥めることが可能だとは思えない。
私はマダムからの雷を覚悟した。
「大真面目だけどね……ちょっと落ち着けよ。たいしておかしなことは言ってないでしょ？お互いのためだよ」
「どうして？僕はもう見ているだけは嫌だと言ったじゃないか！」
「だからって貴方に今更動かれても拗れるだけだって言ってるんだよ」
「僕は…遅かったのか…？」
「そういうわけじゃないけど……私は守られる気は無いってことだよ。貴方にも、他の何者にも」
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第78話 霧散した怒りの矛先→←第76話 哀れみに相違あらぬことを
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亜京目(プロフ) - 有難うございます！ストレートな褒め言葉に顔のニヤケが収まりません…これからもよろしくお願いします。 (2018年12月4日 20時) (
レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんにちは、初コメ失礼致します。物語の設定とか描写の仕方がドストライク過ぎてとても好きです(^^) これからも更新楽しみにしてます。体調など崩されぬようご自愛くださいませ。 (2018年12月2日 14時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 雨さん» コメント有難うございます。最近の話の流れが難しく、四苦八苦しながら更新している状態です。ですが必ずまとめてみせます。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2018年9月22日 16時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - 頑張ってください！更新楽しみにしてます！ (2018年9月17日 21時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - fairy taleさん» 暖かいお言葉をありがとうございます。自分の好きなように書いている物を読んで頂いていること、誠に感謝しております。これからもどうぞご愛読の方よろしくお願い致します。 (2018年8月29日 20時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜京目 | 作成日時：2018年8月17日 22時
