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「北山…これ、今日中に終わるかな？」
「…終わらせないとまずいよな、もう明日本番だし」
案外、城の修正に時間がかかってしまって
俺たち大道具は焦っていた。
「わ〜〜お城だすげぇー！」
休憩時間なのか、藤ヶ谷が教室に入ってきて
俺の横にピタッとくっついた。
「や、これまだ完成じゃなくて、時間ない、ヤバイ」
「マジ？…え、手伝おうか？なんか出来ることある？」
藤ヶ谷も練習疲れてるだろうに、
こっちの仕事も手伝ってくれるなんて、優しいなぁ。
「太輔いた〜〜、これ先生から！…って何やってんの？」
「大道具の手伝いー！」
「えらいじゃん(笑)私も手伝うよ！」
優しい。…優しいけどなんか嫌だ。
だってお似合いなんだもんなぁ、藤ヶ谷の隣。
羨ましい。男って時点で俺は負けている。
そんな気がした。
「おい、スカートん中見えるぞ、下ジャージ履けよ」
「えー別に誰も見てないから大丈夫だよ」
「お前さぁ、男ってのはそういうの見てるもんなんだぞ？少しは女の自覚持てって」
「持ってるわ(笑)でもここに見るような人いないから大丈夫！」
「そういう問題じゃねーだろ、いーから履けって」
…夫婦喧嘩かよ。ちくしょう。
マイコちゃん素直にジャージ持ってきて履いてるし。
「優しいねぇ王子」
「やめてよその呼び方(笑)」
五関と藤ヶ谷が笑いあってるけど、
俺は聞いてないフリをして、黙々と城の修正をした。
「ありがたいなぁ王子と姫(笑)おかげで終わりそうだね」
「だな」
本当にその呼び方、やめてほしい。
聞こえはファンタジーなのに現実に引き戻される。
俺は物語りに出てくる家来Aでも、妖精Bでも、森の動物Cでもない。
物語りの中にさえ入れない大道具。
自分で選んだ仕事なのに、
藤ヶ谷の隣にいれない自分が悔しかった。
「ごめん北山、最終の通しやろうってなっちゃって一緒に帰れないや」
道具を片付けていると
悲しい顔をした藤ヶ谷が教室に入ってきた。
「いいよ別に(笑)謝ることじゃないだろ。頑張ってな」
「うん、ありがと、あ、全部終わった？」
「終わった終わった、２人のおかげだよ。マイコちゃんにもよろしく伝えておいて」
「良かった〜！うん！分かった！じゃあまた明日ね！五関もじゃーね！」
いそいそと支度を整えて教室を出ていく藤ヶ谷。
持っていた台本は最初の頃よりボロボロになっていた。
頑張り屋な所も大好きだ。
悔しいくらいに、大好きだ。
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作者名：はむ
| 作成日時：2017年4月20日 23時
