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95話 ページ45

今の炭治郎には、鬼の弱点である日光も、赫い日輪刀も効かない。

言い換えれば、殺す術がない。

それでも、炭治郎を人のまま殺さなければならない。

Aは限界を迎えて、倒れた体で一連の流れを見た。


『誰か、炭治郎くんを……』


攻撃し続ける炭治郎を生身で抑えている禰豆子にも限界は近づく。

だが、その状況を見てAはふと思った。


まだ禰豆子は生きている。


禰豆子が生きている、それは大したことだ。

目の前に血の滴るご馳走があり、それに加えて、度々炭治郎の攻撃がおかしい。

Aも冨岡もその現実に思考を巡らせていると、カナヲが戻ってきた。


『あの子、一体何を……』


そう思っていると、カナヲは何かを炭治郎の背中に当てた。

だがそれは即ち、カナヲも大怪我を負うということ。


『っ、だれか、あの子を!!』


Aは痛みで動けない体を何とか腕で起こして叫んだ。

だが、その直後、炭治郎の体が動かなくなった。


『……ぁ』

「炭治郎!」


途端、冨岡を筆頭に、善逸や伊之助も炭治郎に駆けつけた。

そこでAは安堵から力を抜いて、顔だけをそこに向けて見守る。


『炭治郎くん、お願い。
早く、戻ってきて』


恐らく、先程カナヲが当てたのは、人間に戻る薬だろう。

禰豆子が人間に戻れているのだ。

他に何かあっても驚くまい。


「石黒様!」

『お願い、あの子たちに…ついてあげて』

「しかし!」

『私は、大丈夫だから』


Aは微笑んで、炭治郎たちの方へと向かわせた。

Aは寝転んで体の止血に呼吸を集中させる。


『っ』


だが、意識すればするほど、息が吸えない。

恐らく、心臓が破裂している。

一度心臓が破裂しているA。

無理やり痣を出したようなもので、長時間の心拍数と、何度か全身にあった衝撃に耐えられなかったのだろう。

Aは冷静に一人で考えていると、声が聞こえた。


「戻ったあああああ!!」

「炭治郎だぁぁぁ!」


その叫び声にAは涙を流した。


――これで、みんなの祈願が果たされた。


鬼との戦いは終わった。

Aは目からは涙を流して、意識を失った。


鬼との戦いは終わった。

至る所に、小さくはない傷跡を残して。

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やぁと(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!優しい彼を描けて良かったです。ラストはすごく悩んでできたシーンなので、涙を流していただき感無量でございます。ここまで長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたらよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 20時) (レス) @page49 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 完結おめでとうございます!実弥さん推しの私ですが、こんな実弥さん大好きです!ラストは涙流しながら読みました。 (2021年11月25日 19時) (レス) @page50 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 金平糖さん» 再びコメントありがとうございます!どうにか無事に完結を迎えられました!感動的なラストを金平糖様にお届けできて幸いです。長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたら、その時もどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます。最後の最後でどばーーーっと涙が… 本当に、完結おめでとうございます! (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 実弥&左馬刻&勝己LOVEさん» 原作とはかなり性格違ってるのでは?と申し訳ないと思いながら書いてるのですが、喜んでいただけて幸いです。これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月14日 23時) (レス) id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月27日 17時

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