元柱だった隊員・2【不死川実弥】

88話 ページ38

鬼舞辻の無差別の触手攻撃で、甘露寺が狙われた。

それを伊黒が助けようとするが、間に合いそうに無く。


「甘露寺！！」


そう叫んだ途端、雷が響いた。


「っ」


伊黒が息を飲み、甘露寺は思わず息が止まった。

そこにはいつもの余裕そうな雰囲気でAが立っていた。


『あんたが、獪岳を鬼にした鬼舞辻無惨？』


Aは刀を既に鞘に戻していた。


「Aさん…」

「石黒、目が覚めたのか」


甘露寺や伊黒が寄ってきて、Aは笑って頷いた。


『何とか起きれたよ』

「貴様、今までどこで何をしていた」

『今ようやく起きた。
遅くなってごめん』


Aは伊黒に謝ると、直後三人の元に触手が襲いかかる。

だが、三人は柱になれるほど、呼吸を極めた者。

避けることなど容易い。


「A！」

『実弥、遅くなってごめん』


Aと実弥は背合わせに立つ。

チラリと見えた彼は、傷だらけだった。

それが、Aが眠って動いている間に起きた出来事。


「戦うのか」

『うん、それが私たち』


また触手は何度でも襲ってくる。


「風の呼吸」

『雷の呼吸』

「弐ノ型」

『弐ノ型』

「爪々・科戸風！」

『稲魂！』


二人は瞬く間に触手を切り刻む。


『帰らないよ、実弥』

「分かってる」

『……愛してる』

「俺もだァ」


二人は同時に違う方向に走り出した。

鬼はすぐそこまで襲ってくる。

今この中で、唯一五体満足なAはあっちこっちを回りながら、全員を補助する。


「石黒」

『冨岡、私が道を開ける』


冨岡の道を作り、


『甘露寺ちゃん、そのままぶちかまして』

「はい！」


甘露寺の攻撃する時間を稼ぎ、


『伊黒、任せた』

「誰に物を言っている」


伊黒と連携を交わして、


「助かった」

『気にしないでください悲鳴嶼さん』


悲鳴嶼を狙う触手を切り落とす。


急に戦場の動きが変わった。

鬼舞辻はそう感じる。

Aが柱全員と連携を上手くとっているからだ。


「貴様、何をした」

『何って、空気を整えただけだけど』

「何？」

『満身創痍な鬼殺隊、瞬く間に再生する鬼。
この中で唯一連戦じゃないのは私だけ。
体力も有り余っている私が、全員を動きやすい様に動いただけ』


結果、変わった。

気がつけばAが隣でみんなの分も狩っている。

Aは手に持っている刀の鋒を鬼舞辻に向けて宣言する。


『私たちが必ず、あんたを倒す』


その刃には、確かに掘られている。

「悪鬼滅殺」の四文字が。

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