元柱だった隊員・2【不死川実弥】

70話 ページ20

Aが起きると、実弥はスースーと寝息をたてて寝ていた。

眉間にシワは寄っていない。


『んー、今何時だ……』


Aは時計を見ようとするが、生憎実弥に抱きつかれてて身動きが取れない。

それでも深夜のことを思い出すと仕方ないかと思い、Aは大人しく実弥が起きるのを待った。

それから間もなく、実弥も起き出した。


『おはよう』

「ん……」

『眠そうだね』

「起きてはいる」


寝起き特有の掠れ声に、Aは笑う。

Aは少し時間が経ってるので割としっかり起きてる。


『今日はどうしよっか』

「何がァ？」

『んー、今日の過ごし方？
一応蝶屋敷で足診てもらうけど、自分ではほとんど回復してるっぽいし』

「骨折ってるやつってそんな元気ないはずなんだけどな」


あはははは〜、と誤魔化すように笑うA。

実弥はAの頬を軽く抓って、体を起こした。


「御館様に、ご挨拶に行くかァ」

『行くんだ』

「行って、Aの休暇を貰って、それから、街に出よう」


Aも体を起こして実弥を見る。

そんなAの横で、実弥はAの手に自身の手を重ねた。


「街に出て、Aがここに住む準備を整える」

『実弥……』

「夫婦になったんだァ、それくらい当然だろ？」


そう笑う実弥の表情は、とても穏やかで。

日頃から隊員たちに恐れられている表情は見る影もない。


『うん、行こう。
必要なものを買いに』


Aが笑うと、実弥も笑う。

二人で笑いあっていると、外で鴉の声が聞こえた。


「カァー！」

「カァー！」


鳴き方が少し異なる二匹なので、恐らく二人の鎹鴉だろうと想像して、また笑う。


『皆で、幸せになるために、頑張らなきゃね』

「お前はもう辞めとけよ」

『また言ってる』


Aは実弥の頬を抓って笑った。

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