67話 ページ17
物心がついた頃から、Aは夜しか外に出られないことに気がついた。
『外を知らなかったから、私が普通じゃないってことも知らなかった。
渋谷っていう都会にいながらも、中通りに入れば人は寄り付かないし、だから本当に何も知らなかった。
けど、ある時、夜に両親と歩いていた時にね、街まで来ていた師範が帰宅途中の私たちを止めたの』
「……元鬼狩りとしての性か」
『そうだと思う。
まぁそれがきっかけで鬼だって気づいたんだけど』
一度鬼の気配を知れば、それはずっと消えない。
だが、鬼と認識しなければそれは分からない。
そして、それは逆も然り。
鬼殺隊の気配を一度知れば、忘れることは無い。
『その鬼は、私を師範の方に押したの』
「……」
『その時に鬼はこう言った』
――あなたをやっと普通の人として生かしてあげられる。
――今までごめんなさい、あなたを逃がしてあげられなくて。
――あなたの幸せをずっと願い続ける。
――どうか、私たちのことを忘れて、あなたは生きなさい。
――私たちはずっと、あなたのことを、愛している。
Aはあの時の温もりを思い出して、声が震えそうになった。
『本当にお母さんのような鬼だった』
「そんなこと……」
『実弥は認められないかもしれないけど、私の育て親は鬼だったんだよ』
Aは実弥と向き合うように座り直して、微笑んだ。
『信じられないかもだけど、これは本当のことなの。
ここの組織は、鬼を憎んでる人ばかりで構成されている組織。
言えないでしょ、鬼に育てられたなんて』
実弥は母親が鬼だと気づかず、母親を殺し、その鬼となった母親に家族を殺された。
それからは鬼の存在を憎んで、今まで生きてきた。
が、それでもAは、鬼に愛されて育って。
『ごめんね、実弥。こんな卑怯なことをして』
Aは微笑んだ表情は変わらない。
その表情を見て、実弥は思う。
いつから心を殺すことに慣れたのだろうか、と。
「それで、その鬼は……」
『眠る私を抱えた師範が、日に当たって灰になる瞬間を見届けたって』
その言葉に実弥は顔を顰めて、Aを抱きしめた。
Aも実弥の背中に手を回す。
『実弥、ごめんね……』
「お前は悪くねェ、謝んなァ」
『実弥は、優しいね』
Aは実弥の温もりと、育ててくれた鬼の温もり、育ててくれた師範の温もりを重ねて、涙を流した。
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やぁと(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます！優しい彼を描けて良かったです。ラストはすごく悩んでできたシーンなので、涙を流していただき感無量でございます。ここまで長々とお付き合い頂きありがとうございました！またの機会がございましたらよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 20時) (
レス) @page49 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 完結おめでとうございます！実弥さん推しの私ですが、こんな実弥さん大好きです！ラストは涙流しながら読みました。 (2021年11月25日 19時) (レス) @page50 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 金平糖さん» 再びコメントありがとうございます！どうにか無事に完結を迎えられました！感動的なラストを金平糖様にお届けできて幸いです。長々とお付き合い頂きありがとうございました！またの機会がございましたら、その時もどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます。最後の最後でどばーーーっと涙が… 本当に、完結おめでとうございます！ (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 実弥＆左馬刻＆勝己LOVEさん» 原作とはかなり性格違ってるのでは？と申し訳ないと思いながら書いてるのですが、喜んでいただけて幸いです。これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月14日 23時) (レス) id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やぁと | 作成日時：2021年10月27日 17時
