元柱だった隊員【不死川実弥】 (ページ9)

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9話ページ9

五月雨の攻撃を避けたA。

Aが居た場所の枝は折れていた。

『うっわ〜、この一瞬でこんなことできるんだ？』

「視界が悪い中、僕の速さに良くついてこれるね？」

『私の呼吸は速さが肝心だから』

「それって、雷？」

『どうしてそう思う？』

「一番速い呼吸は雷だから。
俺も昔そうだったし」

『あらやだ、鬼殺隊の大先輩じゃないですか』

会話の途中でも、五月雨からの攻撃は止まない。

Aは五月雨の攻撃を避け続ける。

『どうして鬼になったの？』

「生きるのが怖くなったから。
毎日毎日任務に出て、仲間が死んでいく。
それが、怖くなったから」

Aはその言葉を聞くと、刀で五月雨の腕を切り、すぐ刀を鞘に戻した。

その一瞬の攻撃に五月雨は目を見開く。

『それは鬼も同じよ』

「っ！」

『仲間が死ぬのは怖いこと。それは私だって思う。
けど、その分、私たちが生きて、その人がいたことを繋ぐしかないのよ』

「え……」

『その人が生きた証は、私たちの記憶の中にしか、私たちの心の中にしか無いんだから』

Aはそれだけ言うと、五月雨の背後に立ち、頸を落とした。

ほんの一瞬。

五月雨の腕は再生をし終えていた。

いくら会話の途中だからと言っても、五月雨はAの動きを注意していた。

にも関わらず、頸は落ちた。

「いま、なにを……」

『頸を落としただけよ』

Aはそう言うと、灰になった五月雨を看取って、瞼を閉じる。

『ねぇカナエ、どうやっても、鬼と仲良くなんてなれないよ……』

Aは亡き友人を思い浮かべて目を細めた。

いつの間にか、雨は止んでいた。