49話 ページ49
翌日、特に何も無かった。
Aはずっと花街で一番高い建物の屋根から、周りを見ていた。
辺りは賑わっていて、音が聞こえにくい。
『相変わらず凄いのね、ここ』
何度か通りがかったり、何なら来たこともある。
それでも、人がどうしても集まる場所に、鬼は寄ってくる。
『本当、飽きないわね……』
ただ分かるのは、ここに潜んでいる鬼は、弱くないこと。
それこそ、上弦級の鬼がいる可能性が高い。
『今回は、軽傷で済むといいなぁ』
そう呟いたA。
だが、それは見事に打ち砕かれて。
.
.
「石黒、善逸と連絡が途絶えた」
宇髄の一言にAは顔を上げた。
その宇髄の顔に迷いは無く。
「二人は帰す。ここから先は俺の仕事だ」
『私も元柱として見逃す訳にはいかない。相手は上弦だ』
「……死ぬかもしれないぞ」
『それが仕事だもん』
Aと宇髄は頷き合うと、炭治郎と伊之助の元に一瞬で向かった。
「善逸なら来ない」
唐突な気配に、炭治郎と伊之助の二人は驚いた。
さっきまで居なかった場所に、宇髄とAが居たのだから。
(――コイツら…やる奴だぜ。
音がしねぇ…風が揺らぎすらしなかった…)
伊之助は二人から感じられなかった感覚に驚く。
だが炭治郎は二人に問いかけた。
「善逸が来ないってどういうことですか?」
その問いかけにAは宇髄を見た。
「お前たちには悪いことをしたと思ってる」
二人に話した。
家族を助けたいがために判断を間違えたこと。
善逸は昨夜から連絡が途絶えたこと。
「お前らはもう
ここにいる鬼が上弦だった場合対処できない。消息を絶った者は死んだと見做す。
後は、俺と石黒二人で動く」
『まぁ、そういう事だから、よろしく』
「いいえ宇髄さん、Aさん、俺たちは…!!」
「恥じるな、生きてる奴が勝ちなんだ。機会を見誤るな」
『煉獄が必死で守ったその命、どうかその心の炎を絶やさないで』
一切目を向けない宇髄と、対して二人に微笑み続けたA。
この二人は来た時と同じように一瞬で姿を消した。
.
.
「ここからは別行動だ、石黒」
『了解。
またどっかで会おうね』
二人から離れた場所で、こちらもまた離れ離れになった。
鬼狩りの時間がやってきた。
173人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月19日 21時