48話 ページ48
遊郭に着いてからというもの。
宇髄の話術により、何とか無事に三人を中に入れることが出来た。
思いのほか無事に進んだ。
『奥方三人が無事だといいね』
「あぁ」
Aと宇髄はとある建物の屋根から街を見下ろしていた。
勿論Aはそのままである。
『んで私は?』
「お前はここで待機」
『は?』
Aは笑顔で宇髄に聞き返した。
『ねぇ、今ここで三人の隊士が働いてるんですよ、実は。知ってますか音柱様〜』
「取り敢えず、石黒は待機」
『何で』
「不死川と約束してるんだろ。
絶対死なねぇって」
『……それとこれとは』
「ここは遊郭、欲に塗れた街。お前だって知ってるだろ」
『だから、私がここで』
「不死川のためにも、俺の指示に従ってくれ」
Aはそう言われて従うしか無かった。
.
.
宇髄も降りていった今、Aは一人屋根から街を見つめていた。
その街の中では、鬼が潜んでいて、宇髄の妻たちが囚われていて、三人の隊員が潜入している。
そして、鬼とも気づかずに、自身の欲のために夜伽する。
『……くだらな』
咄嗟に出た言葉は、普段のAから考えられないほど、冷たかった。
今のAはどんな感情を抱いているのだろうか。
一夜が明けた。
結局、鬼は姿を見せることもしなかった。
宇髄も朝日が登りきる前に戻ってきた。
「俺らは宿に泊まるぞ」
『別室?』
「ああ」
『じゃあ行く』
Aは宇髄に支えられながら、屋根から降りる。
「そんなに俺と二人っきりが嫌か?」
『嫌って言うか、奥様居るから。流石に申し訳ないじゃん』
その言葉に宇髄は少し動揺してAを見た。
Aは首を傾げる。
『なんか変なこと言った?』
「いや、ただそこまで考えてくれてるんだなって」
『へへっ、まぁね』
そう言ったAは笑顔で宇髄を見上げた。
そんな妹みたいなAの頭を優しく撫でる。
『ほら、早く行こう!』
「おう」
そして二人は宿に向かっていった。
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月19日 21時