45話 ページ45
泣き止んだAは、手で涙を拭って実弥を見上げた。
『ごめんね、急に』
「……辞めれば、少しは気が楽になんだろ」
『そしたら、守れる人だって守れない。まだ下の世代が強くなってない。
それは那田蜘蛛山でも、無限列車でも』
「A、本来なら、心臓が破裂して死んでたんだぞ」
『……』
そう言われて、心臓のある位置に手を当てた。
「もう、無理に戦わなくてもいいんだ、A。
俺たちが必ず、醜い鬼を殲滅すっからァ」
『実弥こそ、まだ私より大怪我してないんだよ』
「あ?」
『私より、生きられると思う。
私より長生きして、いつか祝言を挙げてお嫁さんをもらって、みんなに祝われて。
いつの日か子供ができて、周りの人にも恵まれて。
それで、弟と二人で生きてけばいいんだよ!それこそ、私が皆を守るから!』
「何言ってんだ……」
Aは実弥の隊服を握りしめた。
『今よりも、もっと強くなって、速くなって、すぐに皆を守れるように頑張るから。
だから、だからさ、』
「A、本当は体痛ェんだろ」
実弥の確信あるような言葉に、Aは黙り込んだ。
否定はできない、実際痛い。傷口や胸、心も、全部。
それでも、肯定もできない。こんな痛みに負けていられないのだから。
「いつでも辞めても、俺たち柱は受け入れる。
それだけは忘れんなァ」
『……分かった』
実弥の方が折れて、話は終わった。
Aは実弥と離れる。
『ごめん実弥』
「気にすんな」
『やっぱり、実弥は優しいよ』
「ケッ」
面白くなさそうに道場を出ていく実弥を、Aも追いかけた。
道場から出ると、空は晴れていて。
『んっ〜〜〜、気持ちぃぃ』
両手を空に上げて体を動かしていた。
「何してんだA」
『自然の気持ちよさを、体感していた』
「ははっ、そうかィ」
Aも実弥を追って中に入ろうとすると、鴉がやって来た。
「A!A!」
『あら雷生、どうしたの?』
「あ?」
「御館様ガ呼ンデイル!御館様ガ呼ンデイル!」
その言葉に、Aと実弥は目を合わせた。
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月19日 21時